令和時代の公用文

「させていただく」って謙譲語?

「させていただく」って、謙譲語じゃないですよね?

文化庁の敬語の指針には「…ていただく」は、謙譲語ってのってるので、いただくをつけること自体はいいとおもうんだけど

「させていただく」を、単体として謙譲語ですって表記してある書類を見てね。気になっちゃって。

こんな質問をいただきました。

そうですよね。
この方のように、「形態素」がわかっちゃう人は、ここに引っかかりを感じてしまうのではないかと思います。

「形態素」とは
形態素(morpheme)という単位は、意味を表す最小の記号で、それ以上小さく分割することができないものです。
『言語学の仕組み』(町田健著/研究社)より

例えば「お休みさせていただく」を形態素に分けると、次の図のようになります。

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国立国語研究所の形態素解析ツール「Web茶まめ」による解析結果

 

つまり、「させていただく」は、

「させ」+「て」+「いただく」

と、複数の形態素で構成されているわけです。

この中の「いただく」が謙譲語なんじゃないの?
っていう疑問です。

 

私もそう思います。
でも、念のため、辞書を引いてみました。

 

辞書によれば「させていただく」は謙譲語だけど

辞書で「させていただく」を引いてみると、次のように書かれていました。

させていただく(連語)
「(Aに)させてもらう」の謙譲語
自分の行為について 、A に~させてもらうのだという捉え方をし、さらに「いただく」と謙譲語を用いて A を高める言い方。
A の許可を得て行う場面や、 A の意向によって行うと見なせる関係の場合に使う。
『明鏡国語辞典 第2版』(北原保雄編/大修館書店)より

(このほか、語法や注意事項が詳しく書かれているので、読んでみてくださいね)

 

「謙譲語」って書いてありますね!
ということは、「させていただく」は謙譲語……と言っても間違いではないのでしょう。

 

でも私は、
”「させていただく」が丸ごと謙譲語っていうのはおかしいんじゃない?”
というご意見にも賛成なんです。
「謙譲表現」くらいがイイんじゃないのかなぁ、と思っています。

 

そもそも、「語」って何なんでしょうか?

 

「語」って何だろう?

「語」を辞書で調べたら、次のように書かれていました。


一 名詞
(1)ことば。ことば遣い。また、言語。
(2)単語
二 造語成分
(1)かたる。はなす。(例:語気、語調)
(2)物語の略

『明鏡国語辞典 第2版』(北原保雄編/大修館書店)より

 

うーん、ざっくり(笑)
何でも含まれちゃう感じ。

 

ちなみに、私の本棚には、言語学の書籍がたくさんあります。

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でも、「語」の定義が書かれているものは、見つかりませんでした。
そこで、「単語」について調べてみると……

 

実は単語という単位はヨーロッパの文法で昔から使われてきた定義がそれほど明確ではないものなのです。
大雑把に言えば意味的にある程度のまとまりがあって文を構成する要素として一番小さな単位だと考えても構わないもののことです。
(中略)
「見る」とか「走る」という動詞そのものの意味を考えようとする場合などには、単語という単位を使うだけで済ませられるでしょう。
しかし動詞群全体のことを分析したり、名詞でも、例えば「お米」とか「暑さ」のような、複数の形態素からなるもののしくみを考えようとする場合などには、形態素にまで踏み込む必要があります。

『言語学の仕組み』(町田健著/研究社)より

とのことなのです。

「基本的には形態素を、文を構成する最小の要素として考えていく方が厳密な議論ができる」とも書かれていました。

 

一方で、厳密さよりもわかりやすさを優先すべき状況ってあるじゃないですか。
例えば、義務教育の国語の授業とか。
子どもたちにあんまり難しい、学術的なことを厳密に教えたって……ね(笑)

ということで、中学校の文法書を見てみました。
すると、

 

単語とは
意味を持った最小の単位
『的確につかむ文法の学習』(浜島書店)より

 

と書かれていました。

 

この文法書は、私が中学生の家庭教師をしていたときのものです。
つまり10年ぐらい前のものになりますが、今も大きく違ってはいないだろうと思っています。

 

あれ?
最小の単位は「形態素」では?

(; ・`ω・´)

……専門書と義務教育の教科書とでは、想定読者が違うから、こういう差異が出てきますよね。

ということで、「厳密さ」と「わかりやすさ」、どちらを優先するのかで変わってくるのかなーって思います。

 

厳密に言えば、「させていただく」は謙譲「語」ではないけれど、わかりやすくザックリ言えば、「謙譲語」でいいんじゃないですかね~
っていうのが結論です!

 

ちなみに、「させていただきます」については、以前、以下の記事を書きました。

こちらも、ご参考までに~

 

 

このような、言葉に対する「違和感」、「モヤモヤ」、ありませんか。

ご質問、お寄せください♪

出張中とか、お仕事の〆切が迫っているとかでなければ、ソッコーでお答えします(笑)

 

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「や」の使い方

二つ以上の単語を並べるのに「や」を使うとき、次のどちらの書き方をしますか~

_

 

英語では

A , B and C

って書くとか。
(根拠は未確認です)

公用文では

A、B及びC

って書きます。

ということは2.が正式なのかな?

 

みんなに聞いてみた

TwitterとFacebookで友だちに聞いてみました。

こんな細かいこと? 答えてくださった方の数は多くはないですが……

Twitterでの投票結果は次のとおり、1.が14人、2.が5人でした。

Img_5548

 

Facebookでは、1.が11人、2.が2人。

特に1.と答えた人は、公務員が圧倒的に多かったのには驚きました。

私は1.が好きなんですけどね😅

 

なぜ小田は1.が好きなのか

「A、B」と書かれると、

「あー、AとBか~」

って思ったとします。

でも、

「A、B、C、DかEのうち、どれか一つ」

って言われたら、

「え? A and B and C and ……じゃなくて、A or B or C or ……だったのかー💦」

って、ビックリすることもあると思うんです。

「A」じゃなくて「国民健康保険被保険者証」とか長い単語だと特に。

こういうときは、脳に処理負荷がかかっているらしいです。

(パソコンで言うと、なかなか画面が切り替わらないとか、フリーズするとか、ウィーーーン! ってうなり声をあげている感じ?)

ま、とにかく、だから私は1.が好きなんですよね~

 

ガーデンパス効果

例えば、

警官が犯人を捕まえた

って言われると、こんなシーン↙↙↙を想像しませんか。

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でも、

警官が犯人を捕まえた男性に礼を言った。

と最後まで読んでみて、

「え? 犯人を捕まえたのは
 警官じゃないのか!
 犯人を捕まえたのは
 ほかの人で、その人に
 警官がお礼を言ったのか~」

って、考え直すわけです。

2

こんなふうに、解釈のし直しが必要になる文は、読み手の脳に処理負荷がかかる。

この、「処理負荷」のようなものを「ガーデンパス効果」というそうです。

以下の二つの文だと、ガーデンパス効果は

X > Y (Xの負荷が大きい)

になったという実験結果があります。 

  • X 警官が犯人を捕まえた男性に礼を言った。
  • Y 犯人を捕まえた男性に警官が礼を言った。

(井上雅勝2012.「文の理解」福田由紀編著『言語心理学入門―言語力を育てる』pp.110-126,培風館)

つまり、X のほうが「理解しづらい」とか、「効率的に理解できない」(メンドクサイ)文だってことですよね。

 

結論! 「や」はどこに書く?

ということで、結局、「や」を書く場所は、次のどちらがいいのでしょうか。

  1. AやB、C
  2. A、BやC

法律や論文などのようなオカタイ文書では、2.だと思います。

ただ、そういう硬い文書では、そもそも「や」ってあまり使わないですよね。

硬くない文書では、理解しやすさを優先することが多いので、1.がおススメです。

いや、もっと言えば、「や」なんて使わずに、箇条書きにするのがベストです。

例えば、

以下の三つすべてが対象です。

  • A
  • B
  • C

という書き方です。

わかりやすさから言えば、これが正解でしょうね(笑)

 

 

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「標題」か「表題」か

「標題」と「表題」。
この使い分けはどのように考えたらよろしいでしょうか。

こんな質問をいただきました。

1

拙著『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』(学陽書房)にも、「標題」という言葉が何度も出てきます。

でも、一部、「表題」となっていることにお気づきでしょうか。

それはなぜなのか?
どう使い分けるのか?

以下にまとめてみました。

 

辞書を引いてみると……

明鏡国語辞典によると、「標題」も「表題」も同じ意味であるようです。

ただし、

  • 「標」の字は「目立つようにかかげる」の意(例:標語、標示)

なので、「標題のとおり」は、「(さっき既に)かかげた題(タイトル)のとおり」の意味になるかと思います。

ということで、一般的な「タイトル」という意味では、「表題」がいいのかもしれないと考えました。

『記者ハンドブック 第13版』(時事通信社)も『朝日新聞の用語の手引 新版』(朝日新聞出版)も、

  • 「標題」は特別用語(「標題音楽」という固有名詞にのみ使う)

と書かれていて、一般的には「表題」を使うようです。

なぜ「標題」と書くのか

では、なぜ拙著には「標題」と書いたのでしょうか。

それは、建議「公用文作成の考え方」にそう書いてあるからです。

そのため、拙著の「第6章 情報の示し方(文章の書き方)」の以下の部分は私のミスです。

つい「表題」と書いてしまいましたが、「標題」で統一すべきでした。

  • 「4 標題、見出しの付け方」(P.163)下から6行目
  • 「6 標題・見出しの適切な文字数」(P.166)6・7・10行目

申し訳ありません。

修正をお願いします。


国も地方自治体も、「標題」と書きます。

ただ、特に根拠はないようです。

役所は「標題のとおり」とか「標記の件について」が好きなんです(笑)

国の某職員の方にも聞いてみましたが、

「役所の示す文書、という観点から重みを加えようとしている面もあるかもしれませんねー」

という程度で話は終わりました。

結局、どっちなの???

メディアでは「表題」を使うわけですから、一般的には「表題」と書いたほうが無難です。

ネット上には、いろいろな情報があふれていますが、真偽のほどは定かではありません。

例えば、”「表題」はタイトルのことで、「標題」は見出しのことだ”と書いている人もいましたが、そんなことは初めて聞きました。

参考:「表題」と「標題」の違いとは?メールの件名ではどちらを使う?

※これ↗↗↗が正しいという意味ではないのでご注意を❗
(正直言って、違うんじゃないかと思います💦)

 

以下は私の考えですが、

A:「告示・通知等」(拙著では「公用文I」)では「標題」
B:「解説・広報等」(拙著では「広報文」)では「表題」

が適切なのかもしれません。

「記録・公開資料等」(拙著では「公用文II」)については、

  • 表記のルールはAに合わせる
  • それ以外の語彙などの表現方法はBに合わせる

というのが新しい「公用文の考え方」です。

そのため、「標題」と書くことになりますかね。

でも、「標題」がイヤ(笑)

ただ、私は「標題」「標記」という言葉自体を使ってほしくないのです。

役所の起案(民間では稟議書にあたるもの)のタイトルは、ハンコで押したように

○○○○○○について

です。

そして、文頭に

  • 標題について
  • 標題の件について
  • このことについて

に続けて「下記のとおり実施してよいか伺います」と書き起こします。

つまり、「標題」「標記」の「標」は、「この」という指示語と同じ働きをしているわけです。

これは役所特有の言語文化です。

一般的な文章では、文頭にいきなり指示語は使いません。

(指示語とは、「この」「それ」「あちら」などです)

特にメールなどで「標題のとおり」と書かれると、読み手はいったん標題に目を戻すことになります。

その手間を読み手に強いるのは、望ましくありません。

そのため私は、指示語としての働きを持つ「標」を、むやみに使ってほしくないと考えるのです。

※「標語」や「標的」までダメだとは言っていません。

もっと言えば、わざわざ「タイトル」と横文字で併記・解説しなくてはいけないくらいなら、「題名」って書けばいいじゃないかとも思ったりしますが(笑)

いかがでしょうか。

ご意見、ご感想をいただけるとうれしいです!

 

 

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上司の指示が正しいのかどうか判断できずに困っています

敬語の使い方で、上司に修正するよう言われました。

この書き方で合っているのでしょうか?

こんな質問をいただきました。

(あまり具体的に書いてしまうと、個人が特定されてしまうので、ここでは伏せておきます)

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私は、「上司の指示が変だなぁ」とは思ったのですが、それは、質問者も感じていることなので、次のようにお答えしました。

どうしてそうなるのか理由がわかりかねますが……

上司の方の判断なので、「なぜそうするのか」を聞いてみてはどうでしょう。

「向学のために教えてください」

とか

「後輩の指導のためにご教示ください」

と聞けば、失礼はないかと思います。 

この、「理由、根拠を聞く」ということは非常に重要です。

「なんとなく、こっちのほうがいいから」

といった主観的、抽象的な理由であれば、上司の判断が間違っている可能性もあります。

 

「社内のマニュアルに書いてあるから」

という理由の場合も、そのマニュアルが間違っているおそれも。

実際、大企業でも、敬語の誤用が多数、見られるケースがあります。

おそらく、社内の敬語マニュアルが間違っているのだと思います。

私がコンサルティングや研修でかかわった企業のマニュアルも、やはり間違いがありました。

 

そのため、拙著『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』(学陽書房)の説明部分をお示しして、

「国語のルールではこうなっているようなのですが、いかがでしょうか」

と、上司に話してみるといいと思いますよ。

勇気のいることかもしれませんが、あなたの勇気が、社内マニュアルの改善につながる可能性もあります。

あなたには、私(の本)がついています。

頑張って!

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新「公用文作成の要領」に意見を送ってみました

新「公用文作成の要領」パブコメ開始

「パブコメ」とは、「パブリックコメント」の略です。
これは、広く意見を募集する制度です。

このたび、ついに、
「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)
のパブコメ(意見募集)が始まりました!

(2021年12月21日〆切)

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私の予想どおり、

 

オリパラが終わり、
コロナが落ち着き、
新しい総裁も決まったし、
そろそろやるかー

 

……って感じだと思います(笑)

 

パブコメの後は……

今年3月に国語の専門家会議から出た報告書は、
このパブコメという儀式を経て、


「国民の意見を聴いた、同意を得た」

とみなされて、
(軽微な)加除訂正をした最終版ができあがり、
国として認めた正式版となるわけです。

※私は、文化庁所管の「文化審議会国語分科会」を
「国語の専門家会議」と呼ぶことにしています。
コロナの専門家会議に似せて、
わかりやすさ、親しみやすさを狙っています。

 

そうなると、今後、行政はもちろん、
民間の公式文章の書き方にも影響があるでしょう。
また、義務教育の教科書も変わるでしょう。

「新「公用文作成の要領」」を読んでみた

ということで、さっそく私も、
「新「公用文作成の要領」」を
読んでみました。

これは、3月の報告書のうち、
新しい「公用文作成の要領」(案)の部分が本体に、
報告書本体が、付録の解説となっています。
内容的に大きな変更はありませんでした。

ただ、ちょっと気になる点がいくつかあったので、
意見を送りました。

その内容を、ここで公開しちゃいます~

「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)に関する小田の意見

【1】「新「公用文作成の要領」(仮)(案)」に対する意見

(1) 「Ⅱ 用語の使い方」の「6 文書の目的、媒体に応じた言葉を用いる」(P.6)

「ウ」の部分は、以下のような印象です。

  • 「ございます」→NG
  • 「申します」「参ります」→原則NG
  • 「おります」「いたします」→推奨

「申します」「参ります」については、文末が「使わない」で、「ただし」と続いているので、逆接的な内容(「使う」べき表現)が後に続くと予測しながら読み進めました。すると、「おります」「いたします」の文末が「用いる」なので、使用を推奨しているような印象を受けた次第です。

これでは、「おります」「いたします」を連呼されるのではないかと危惧します。一対一のやりとりであるメールや紙の通知文などであればともかく、ウェブサイトなど不特定多数に向けた文章では、「います」「します」とシンプルに言い切って、1文を1文字でも短くしたほうが効率的に理解できると考えます。

「おります」「いたします」も、「申します」「参ります」と同様に、

「読み手に配慮する特別な場合を除いては使わない」

とするか、あるいは記載しなくてもよいかと思います。言及するのであれば、

「必要に応じて用いてもよいが、むやみに使わない」、「多用しない」

などとしていただきたいものです。

また、「解説・広報等における文末は」とあるので、「(付)「新「公用文作成の要領」(仮)」解説(案)」にある

「情報を簡潔に伝えるときは、「である・だ」も使用する。」

も記載してはどうでしょうか。こちらのほうが、「おります」「いたします」を推奨することより、必要な記述かと思います。

 

(2) 「Ⅲ 伝わる公用文のために」の「2 標題・見出しの付け方に当たっては、次のような工夫をする」(P.7)


「ア」の例文は、僭越(せんえつ)ながら、すばらしいものだと感じました。
行政にありがちな、「事業年度+事業名称+について」という標題は、読む気力を失わせます。「~についてのどんな情報なのか」がわからず、わからないまま読み進めるので、理解も妨げます。

標題や見出しは文章の「ラベル」――つまり、文章の概要を示すものではないでしょうか。そのため、ここに書かれているように、具体的なものとすべきであると考えます。行政内部であればともかく、組織外に発出する文書は、具体的な標題・見出しにしていただけることを期待します。

 

【2】「(付)「新「公用文作成の要領」(仮)」解説(案)」に対する意見

 

(1) 「Ⅱ 用語の使い方 Ⅱ-1 法令・公用文に特有の用語の扱い」の 「及び・並びに」(P.21)

三つ目の例は、改善の余地があると思います。

一つ目と二つ目の例には、「両者」「全て」と記載があります。三つ目も、「全て」と明記しなければ、「どれか(どちらか)一つだけでも良い」と誤解する人も出てくるのではないでしょうか。

具体的には、以下のような改善を提案します。


→ 次に挙げることに配慮する。 ・鉄道の整備と安全の確保 ・鉄道事業の発達と改善

↓↓↓↓↓

→ 次に挙げること全てに配慮する。 ・鉄道の整備と安全の確保 ・鉄道事業の発達と改善

 

 

(2) 「Ⅱ-6 文書の目的、媒体に応じた言葉の使い方」の「ウ 敬語など相手や場面に応じた気遣いの表現を適切に使う」(P.27)

 

前述(【1】(1))のとおり、改善を期待します。

 

(3) 「Ⅲ-2 標題、見出しの付け方」の「ア 標題(タイトル)では主題と文書の性格を示す」(P.31)

一つ目の例の「新国立体育館について → 新国立体育館建設工事の進捗状況について」を見ると、タイトルや見出しに「~について」を使うことを推奨しているような印象です。「~について」では、「~についての何なのか」がわからないので、「お手本」とすべきものではないと思います。

行政内部での使用を禁止することはないかもしれませんが、「これが正しいルールだ」、「推奨している」と誤解されないよう、以下のように修正してはどうでしょうか。


……取り上げる事柄を特定できるようにする。また、その主題についてどのようなメッセージを送るのか、報告、提案、回答、確認、開催、許可などの言葉を使って文書の性格を示す。「…の進捗状況に関する報告」などとするか、「…の進捗状況について(報告)」のように括弧を用いることもできる。
例)新国立体育館について → 新国立体育館建設の進捗状況に関する報告

標題の文字数は、……

なお、前述(【1】(2))のとおり、「新「公用文作成の要領」(仮)(案)」の「Ⅲ 伝わる公用文のために」の「2 標題・見出しの付け方に当たっては、次のような工夫をする」(P.7)の「ア」の三つの「例」はすばらしいと思います。「公用文作成の要領」本体と、付録の解説との整合性を考慮しても、本体の例文に合わせるべきではないかと考えます。

 

以上です。

 

 

 

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新「公用文作成の要領」の影響その1 教科書が変わる!

12月8日から21日まで、「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)に関する意見を募集しています▼

 

「公用文? 役所の文書でしょ? 興味ないし~」

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って言うなかれ。

あの、ちょー意味不明なお役所文章(笑)を
改善しましょう! って動きなわけですし、
学校の教科書や民間企業の文書にも
影響があるんですよー

1.学校2.企業3.身近な役所と、
それぞれ影響を考えてみます。

 

今回は、1.学校。

コンマからテンへ

小中学校の教科書で、横書きのものは、
読点「、」ではなく、コンマ「,」で
書かれているってご存じですか?

 

そんなことあるわけない!
という方も多いのですが、
そんなこと、あるんです。。。

 

参考:公用文の横書きのコンマ、時代遅れ?68年後の見直し案|朝日新聞(2020年12月27日 8時00分)※有料会員記事

 

そう。
「横書きではコンマを使う」って、
「公用文作成の要領」に書いてあるからなんです。

それを今回、70年ぶりに見直して、
「横書きではテンを使う」ということを
国語の専門家が提案したというわけです。

 

名→姓から姓→名へ

ほかにも、ローマ字で名前を書くときに、
Junko Oda と姓を後に書いていたものが、
Oda Junko と逆になるみたいですよ。

 

ちなみに、高校の国語の教科書も大きく変わります。

 

参考:22年度から使用、高校教科書 国語「現代社会のよう」 論理的思考養成に重点|毎日新聞(2021/3/31 東京朝刊)※有料記事

※これはまた、別の記事で書きたいと思っています。

 

ということで、次回は、
「新・公用文作成の要領」が
企業に与える影響について
書こうと思います。

 

 

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『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』読者プレゼント

令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』(学陽書房)のサイトを作りました😊

 

読者プレゼントもご用意しました。

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「させていただきます」考 再び

「させていただく」を、どうしても使ってしまいます。

「いたします。」では、相手に対する敬意がイマイチというか、少し突き放した感じがするのです。

「取り下げさせていただきます。」を「取り下げいたします。」と言うと、一方的に取り下げる感じがしてしまいます。

このような質問をいただきました。

 

結論から言うと、大切なのは、

(主に)相手(聞き手・読み手)に不快感を与えないかどうか

ということです。

そのため、時と場合によって、使ってよいかどうかの判断が変わります。

 

まずは「敬語の指針」でおさらい

「敬語の指針」(平成19年2月2日文化審議会答申)には、次のような説明があります。

基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。
(中略)
なお,ア ,イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように )見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。
(中略)
その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。

……ということで、「許容」されるかどうかは、極論を言えば、個人の自由。

入学試験や検定試験を受けるのでなければ、「させていただく」を好きに使ってよいわけです。

ただ、私としては、使うべきではないと考えるケースがあります。

 

「させていただく」は怒りや敵意も表現できる

テレビドラマで、ときどき見るシーン。

事実と異なる記事を書かれた! 名誉棄損だ!

医師のミスで家族が命を落とした! 医療ミスだ!

訴えさせていただきます!


Ikari

 

これは、相手の許可を得ていない。

それに「恩恵を受ける」という感謝の気持ちでもない。

あきらかに「敵意」「怒り」ですよね。

昭和のドラマだと、夫婦げんかをした妻が、

実家に帰らせていただきます💢

と、夫に言い放つシーンもありましたね(笑)

 

こんなふうに、「敬語の指針」にある(ア)(イ)に当てはまらない使い方もあります。

それどころか、「第1 基本的な認識」に書かれている

敬語は,人と人との相互尊重の気持ちを基盤とすべきものである

といった記述にも当てはまりません。

 

でも、ドラマなどで見聞きするせいか、特に違和感がないですよね?

そのため、このような怒りや敵意により、あてつけで「させていただく」と言っているんだ……と受け止められることだってあると思いませんか?

相手が不快に思うおそれがある場合は、使わないほうがいいに決まっています。

 

「させていただく」を使わないほうが良いケース

では、どんな場合に不快に思われてしまうでしょうか。

例えば、役所で

  • 延々、待たされた
  • 高額な保険料や税額の通知が来た
  • 申請したのに却下された
  • せっかく来たのに窓口が閉まっていた
  • 家を出るときに家族とケンカをした

……などの理由でイライラしているとき。

「それは禁止させていただいております」

「本日は休館日とさせていただいております」

「様々な条件を勘案して決めさせていただいております」

「その日はワタクシ、休暇をとら(さ)せていただいております」

なんて言われて、カッチーーーーーン💢💢💢

ってこともあるかもしれませんよ~

 

というわけで、ご質問のケースは、相手が「取り下げろ」と言ったのであれば、相手の許可を得ているので、「取り下げさせていただきます」と言っても良いのではないでしょうか。

「取り下げろ」とは言っていないけど、ネチネチとケチをつけてきたから取り下げる……のであれば、相手との関係性や、そのときの状況、コンテクスト(文脈)によりますね。

対面であれば、しおらしい態度(表情)、声色で、思いは伝わるかもしれません。

メールなど活字だと、状況によっては怒りをかうこともあるでしょう。

取り下げろとは言ってないだろう! オレのせいにする気か?

とか、

安易に取り下げるんじゃなくて、指摘された部分の改善を考えろよっ!

とかって怒られるかも、な~んて思ったり。

 

そもそも敬語って、相手との距離があることを表すのです(ウチとソト)。

だから、「させていただきます」で距離を置かれてしまうと、「あ、怒った? なんか気に入らないのかな?」って思っちゃうかも。

私なら、「なるほど。おっしゃる通りです。これは○○(不公平、時期尚早ナド)でした。取り下げます。ご指摘ありがとうございます」なんて言っていただくと、ご機嫌です♪

 

 

ちなみに、「させていただきます」については、以前、以下の記事を書きました。

こちらも、ご参考までに~

 

 

このような、言葉に対する「違和感」、「モヤモヤ」、ありませんか。

ご質問、お寄せください♪

出張中とか、お仕事の〆切が迫っているとかでなければ、ソッコーでお答えします(笑)

 

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「お大事にされてください」は間違いですか?

  • 時間をかけてゆっくり「休まれて」ください。
  • お大事に「されて」ください。

ついつい使ってしまうのですが、これも敬語の誤用でしょうか。

 

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こんな質問をいただきました。

この方の違和感の原因は、三つあると思います。

順に解説します。

違和感1 「お(ご)~する」は謙譲語では?

「お(ご)~する」は謙譲語です。

例えば、「聞く」という動作の場合、

  • 「先生が私に聞きになる」(尊敬語)
  • 「私が先生に聞きする」(謙譲語)

といった使い分けをします。

つまり、

  • 「聞く」という動作をする人(動作の主体)を敬いたいときは、尊敬語を使う
  • 「聞く」という動作をされる人(動作の客体)を敬いたいときは、謙譲語を使う

わけです。

 

では、

「先生、お大事にされてください」

は、誰が誰を「大事にする」のでしょうか。

 

……「先生が先生(自分自身)を大事にする」のですよね。

そう考えると、謙譲語を使って、「大事にする」という動作をされる人(客体)を敬うのは、まんざら間違いでもないかもしれません?!

でも、「大事にする」という動作をする人(主体)も敬いたい……ということで、「される」と尊敬語も使ってみた、というところでしょうか?!

(「間違いだ」と明言すると、「言葉狩りだ!」と非難・攻撃され、「言葉狩り狩り」※に遭うのも怖いので 笑)

※言葉の使い方を「間違っている」と指摘すると、「言葉狩り」だと言われることがあります。そのような「言葉狩り」を批判することを「言葉狩り狩り」と表現しています。「オヤジ狩り狩り」的な(笑)

 

違和感2 「れる」は尊敬? 受け身?

「れる(られる)」という助動詞には、

  1. 可能
  2. 自発
  3. 受け身
  4. 尊敬

と四つの意味があります。

そのため、「先生、お大事にさてください」と言うと、「家族とか誰かに大事にされる」といった「受け身」にも解釈できますよね。

 

ということで、間違いだとは言いませんが、私は「お大事になさってください」と言います。

 

違和感3 「される」 < 「なさる」 の気がする……

ちなみに、「休まれてください」に関しては、特に間違っているわけではありません。

(「お休みされてください」はちょっとダメかなwww)

でも、私なら「お休みください」と言います。

 

……と、ここまで説明して、質問者ご本人は、

「お大事になさってください」を使える大人を目指します

とのことでしたが、いまひとつ、腑に落ちないご様子。

おそらく、

なぜ、「されてください」に違和感があり、「なさってください」だとイイ感じがするのか

ということに対して、今度はモヤモヤしたのではないでしょうか。

 

それについては、

先生が言われた

と言うより、

先生がおしゃった

と言ったほうが、なんかカッコいいですよね。

それと同じなのだと思います。

 

「れる(られる)」をくっつければ、たいていの動詞は尊敬語にすることができます。

でも、「おっしゃる」とか「召しあがる」、「お越しになる」といった表現のほうが、「ちゃんとした感」がありますよね。

逆に「れる(られる)」は、「尊敬」以外にもいろんな意味を持つ助動詞ですから、「お手軽感」があるというか。

 

だから、「お(ご)~なさる」という表現のほうが、「ちゃんとした敬語」感があるんだと思いますよ。

そんなことをお伝えしたら、「とても腹落ちしました」とのことでした。

めでたし、めでたし✨

 

このような、言葉に対する「違和感」、「モヤモヤ」、ありませんか。

ご質問、お寄せくださいね♪

 

 

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「お出会いする」という敬語はおかしくないですか?

ある著名な政治家が、スピーチや著書などで好んで使う表現、「お出会いする」。

どうにも違和感があるのですが、これは正しい敬語表現でしょうか。

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そんな質問をいただきました。

そこで、その「違和感」の理由を探ってみます。

 

まず、「お(ご)~する」という表現は、敬語の種類で言うと、「謙譲語」と呼ばれるものです。

つまり、「~する」という動作をされる人(動作の客体)に対する敬意を表すものです。

 

でも、「出会う」というのは、偶然性が高い。

意図的に行った動作ではないわけです。

そのため、敬語を使うと違和感があるのではないでしょうか。

 

もし、出会えたことに感謝し、相手に敬意を表するのであれば、

  • お会いできた
  • お知り合いになれた
  • ご縁をいただいた

といった表現が考えられます。

 

さらに、私の師匠のご意見もうかがいました。

その結果、

出会いというのは「AさんとBさんの出会い」とも言えるように、2人で同時に同じ行為をしている訳ですから、どちらか一方の動作に限定できないように思います。

尊敬語も謙譲語も、どちらか一方の行為を表すものですから、そもそもこの表現になじまないのかもしれません。

とのご指摘をいただきました。

さらに、

「AさんがBさんとご結婚された」というのが反例になるかもしれませんが、「ご結婚」はすでに「ご結婚のお祝い」のように名詞としても定着していますので、「する」を付け易いのでしょうね。

とのことでした。

 

皆さんの「激しい違和感」の理由が解消されたでしょうか(笑)

こんなご質問、どんどんお寄せくださいね♪

 

 

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