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新「公用文作成の要領」に意見を送ってみました

新「公用文作成の要領」パブコメ開始

「パブコメ」とは、「パブリックコメント」の略です。
これは、広く意見を募集する制度です。

このたび、ついに、
「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)
のパブコメ(意見募集)が始まりました!

(2021年12月21日〆切)

Photo_20211220174301

私の予想どおり、

 

オリパラが終わり、
コロナが落ち着き、
新しい総裁も決まったし、
そろそろやるかー

 

……って感じだと思います(笑)

 

パブコメの後は……

今年3月に国語の専門家会議から出た報告書は、
このパブコメという儀式を経て、


「国民の意見を聴いた、同意を得た」

とみなされて、
(軽微な)加除訂正をした最終版ができあがり、
国として認めた正式版となるわけです。

※私は、文化庁所管の「文化審議会国語分科会」を
「国語の専門家会議」と呼ぶことにしています。
コロナの専門家会議に似せて、
わかりやすさ、親しみやすさを狙っています。

 

そうなると、今後、行政はもちろん、
民間の公式文章の書き方にも影響があるでしょう。
また、義務教育の教科書も変わるでしょう。

「新「公用文作成の要領」」を読んでみた

ということで、さっそく私も、
「新「公用文作成の要領」」を
読んでみました。

これは、3月の報告書のうち、
新しい「公用文作成の要領」(案)の部分が本体に、
報告書本体が、付録の解説となっています。
内容的に大きな変更はありませんでした。

ただ、ちょっと気になる点がいくつかあったので、
意見を送りました。

その内容を、ここで公開しちゃいます~

「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)に関する小田の意見

【1】「新「公用文作成の要領」(仮)(案)」に対する意見

(1) 「Ⅱ 用語の使い方」の「6 文書の目的、媒体に応じた言葉を用いる」(P.6)

「ウ」の部分は、以下のような印象です。

  • 「ございます」→NG
  • 「申します」「参ります」→原則NG
  • 「おります」「いたします」→推奨

「申します」「参ります」については、文末が「使わない」で、「ただし」と続いているので、逆接的な内容(「使う」べき表現)が後に続くと予測しながら読み進めました。すると、「おります」「いたします」の文末が「用いる」なので、使用を推奨しているような印象を受けた次第です。

これでは、「おります」「いたします」を連呼されるのではないかと危惧します。一対一のやりとりであるメールや紙の通知文などであればともかく、ウェブサイトなど不特定多数に向けた文章では、「います」「します」とシンプルに言い切って、1文を1文字でも短くしたほうが効率的に理解できると考えます。

「おります」「いたします」も、「申します」「参ります」と同様に、

「読み手に配慮する特別な場合を除いては使わない」

とするか、あるいは記載しなくてもよいかと思います。言及するのであれば、

「必要に応じて用いてもよいが、むやみに使わない」、「多用しない」

などとしていただきたいものです。

また、「解説・広報等における文末は」とあるので、「(付)「新「公用文作成の要領」(仮)」解説(案)」にある

「情報を簡潔に伝えるときは、「である・だ」も使用する。」

も記載してはどうでしょうか。こちらのほうが、「おります」「いたします」を推奨することより、必要な記述かと思います。

 

(2) 「Ⅲ 伝わる公用文のために」の「2 標題・見出しの付け方に当たっては、次のような工夫をする」(P.7)


「ア」の例文は、僭越(せんえつ)ながら、すばらしいものだと感じました。
行政にありがちな、「事業年度+事業名称+について」という標題は、読む気力を失わせます。「~についてのどんな情報なのか」がわからず、わからないまま読み進めるので、理解も妨げます。

標題や見出しは文章の「ラベル」――つまり、文章の概要を示すものではないでしょうか。そのため、ここに書かれているように、具体的なものとすべきであると考えます。行政内部であればともかく、組織外に発出する文書は、具体的な標題・見出しにしていただけることを期待します。

 

【2】「(付)「新「公用文作成の要領」(仮)」解説(案)」に対する意見

 

(1) 「Ⅱ 用語の使い方 Ⅱ-1 法令・公用文に特有の用語の扱い」の 「及び・並びに」(P.21)

三つ目の例は、改善の余地があると思います。

一つ目と二つ目の例には、「両者」「全て」と記載があります。三つ目も、「全て」と明記しなければ、「どれか(どちらか)一つだけでも良い」と誤解する人も出てくるのではないでしょうか。

具体的には、以下のような改善を提案します。


→ 次に挙げることに配慮する。 ・鉄道の整備と安全の確保 ・鉄道事業の発達と改善

↓↓↓↓↓

→ 次に挙げること全てに配慮する。 ・鉄道の整備と安全の確保 ・鉄道事業の発達と改善

 

 

(2) 「Ⅱ-6 文書の目的、媒体に応じた言葉の使い方」の「ウ 敬語など相手や場面に応じた気遣いの表現を適切に使う」(P.27)

 

前述(【1】(1))のとおり、改善を期待します。

 

(3) 「Ⅲ-2 標題、見出しの付け方」の「ア 標題(タイトル)では主題と文書の性格を示す」(P.31)

一つ目の例の「新国立体育館について → 新国立体育館建設工事の進捗状況について」を見ると、タイトルや見出しに「~について」を使うことを推奨しているような印象です。「~について」では、「~についての何なのか」がわからないので、「お手本」とすべきものではないと思います。

行政内部での使用を禁止することはないかもしれませんが、「これが正しいルールだ」、「推奨している」と誤解されないよう、以下のように修正してはどうでしょうか。


……取り上げる事柄を特定できるようにする。また、その主題についてどのようなメッセージを送るのか、報告、提案、回答、確認、開催、許可などの言葉を使って文書の性格を示す。「…の進捗状況に関する報告」などとするか、「…の進捗状況について(報告)」のように括弧を用いることもできる。
例)新国立体育館について → 新国立体育館建設の進捗状況に関する報告

標題の文字数は、……

なお、前述(【1】(2))のとおり、「新「公用文作成の要領」(仮)(案)」の「Ⅲ 伝わる公用文のために」の「2 標題・見出しの付け方に当たっては、次のような工夫をする」(P.7)の「ア」の三つの「例」はすばらしいと思います。「公用文作成の要領」本体と、付録の解説との整合性を考慮しても、本体の例文に合わせるべきではないかと考えます。

 

以上です。

 

 

 

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新「公用文作成の要領」の影響その1 教科書が変わる!

12月8日から21日まで、「新「公用文作成の要領」(仮)」(案)に関する意見を募集しています▼

 

「公用文? 役所の文書でしょ? 興味ないし~」

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って言うなかれ。

あの、ちょー意味不明なお役所文章(笑)を
改善しましょう! って動きなわけですし、
学校の教科書や民間企業の文書にも
影響があるんですよー

1.学校2.企業3.身近な役所と、
それぞれ影響を考えてみます。

 

今回は、1.学校。

コンマからテンへ

小中学校の教科書で、横書きのものは、
読点「、」ではなく、コンマ「,」で
書かれているってご存じですか?

 

そんなことあるわけない!
という方も多いのですが、
そんなこと、あるんです。。。

 

参考:公用文の横書きのコンマ、時代遅れ?68年後の見直し案|朝日新聞(2020年12月27日 8時00分)※有料会員記事

 

そう。
「横書きではコンマを使う」って、
「公用文作成の要領」に書いてあるからなんです。

それを今回、70年ぶりに見直して、
「横書きではテンを使う」ということを
国語の専門家が提案したというわけです。

 

名→姓から姓→名へ

ほかにも、ローマ字で名前を書くときに、
Junko Oda と姓を後に書いていたものが、
Oda Junko と逆になるみたいですよ。

 

ちなみに、高校の国語の教科書も大きく変わります。

 

参考:22年度から使用、高校教科書 国語「現代社会のよう」 論理的思考養成に重点|毎日新聞(2021/3/31 東京朝刊)※有料記事

※これはまた、別の記事で書きたいと思っています。

 

ということで、次回は、
「新・公用文作成の要領」が
企業に与える影響について
書こうと思います。

 

 

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読解力は人生を左右する?!

今回も、

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著/東洋経済新報社)

を読んだ感想というか、備忘録です。

 

私は学生時代から、家庭教師や塾講師として、小中学生、高校生に「勉強を教える」ということを経験してきました。

 

そのときに、気づいたことがあります。

生徒によっては、正答できない理由が、

そもそも問題文に書かれていることが
読み取れていない。

何を聞かれているか理解できないので、
何をどう答えていいのかがわからない

というケースもあったのです。

 

しかし著者は、それ以前の問題として、

教科書に書かれていることが理解できないのではないか

という疑問を提示しています。

 

■読解力と偏差値

続きを読む "読解力は人生を左右する?!"

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丸暗記ではAIに勝てない……

前回に引き続き、

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著/東洋経済新報社)

を読んだ感想というか、備忘録です。

本書によれば、AIは、

  • 「係り受け」
  • 「照応」(コソアド言葉が何を指すか、ですね)

は、得意

でも、「同義文判定」は苦手で、
「推論」はおそらく不可能だとか。

以下に、「同義文判定」と「推論」の例をご紹介します。

続きを読む "丸暗記ではAIに勝てない……"

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『AI vs 教科書が読めない子どもたち』

Siriに「イタリア料理のレストラン」と言うと、
いくつかのイタリア料理のお店を教えてくれます。

 

でも、「イタリア料理以外のレストラン」と言っても、
やはり、同じイタリア料理のお店を教えてくれるんです。

 

今後、「以外の」とか「じゃない」とかの語彙を学習させれば、
正しい答えを返せるようになるかもしれませんが、
今の時点では期待した答えが返ってきません。

 

でも、人間の子どもたちにも、似たような傾向があるようです。

 

少し前に話題になった、

 

『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著/東洋経済新報社)

 

によれば、子どもたちの読解力は危機的状況にあるとか。

 

以下に、全国読解力調査の例をご紹介します。

続きを読む "『AI vs 教科書が読めない子どもたち』"

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「ドナルド・キーン・センター柏崎」 の内覧会に行ってきました

2013年9月21日にオープンする
「ドナルド・キーン・センター柏崎」の
内覧会に行ってきました。

 

あ、その前に。

私、柏崎市(新潟県)の「広報専門官」を拝命し、
月の半分くらいは柏崎市役所に勤務しております。

参考
柏崎市広報専門官の任用について
(市長定例記者会見概要(平成25年9月4日))

 

 役得、ヤクトク
オープン直前のセンターの内覧会に潜入。

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「復興庁幹部のツイッター暴言」に見る、言葉のチカラ

謝罪会見で使ってはいけない言葉

復興庁幹部暴言ツイート:復興相が謝罪 国の姿勢疑う声も

 

復興庁で福島県の被災者支援を担当する水野靖久参事官(45)がツイッターで暴言を繰り返していた問題は、13日の衆院東日本大震災復興特別委員会で根本匠復興相が謝罪。同県の地元自治体などからは「国は腹の中でどう思っているのか」と国の姿勢を疑う声も上がるなど波紋が広がった。

◇復興相「深くおわび」

「発言が事実とすれば国家公務員として不適切で、関係者に不快な思いをさせたのなら率直におわびしたい」。根本復興相は復興特別委で、沈痛な表情で頭を下げた。

毎日新聞 2013年06月13日 11時45分(最終更新 06月13日 12時45分)

確かに、沈痛な表情は良かった。

日本プロ野球機構が、統一球に関する事実を公表していなかった件で、加藤良三コミッショナーが行った会見(6月12日)よりはマシです。

「自分は知らされていなかった」、「不祥事を起こしたとは思っていない」と勝ち誇ったように言う、あの表情はまずいです。

「沈痛な表情」で、まずは「ごめんなさい」をするべきです。
組織の広報担当は、何もアドバイスをしなかったのでしょうか。

ダルビッシュ選手にも指摘されてますが、「自分に非はない」ことを強調しても、解決策にはつながらないし、誰も得をしない。

「名前は入れるけど、自分に責任はない」のであれば、広告費を払うべきでは(笑)

と、それはさておき、復興庁のお話に戻ります。

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誤解を招く表現は、悪気がなくてもNG!

エッチしよ

 
 

Doki

っとした人も少なくないようですね。
松下奈緒さんの、「クリアアサヒ」のCM。

そのせいなのかどうかは不明ですが、
このバージョンは見なくなりました。

 

では、これはどうでしょう。

Tokuhou

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3.11を忘れない ―クローバーの花

取材で訪れた陸前高田市。

津波が何メートルかを聞いても、
それがどれだけの破壊力があるのかはイメージできない。
どんな事態に陥るのか、想像できない。

 

ここまで船が流されたのか、とか、

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 がれきがまだ、こんなに残っているのか、とか、

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線路が途中でなくなっちゃってるな、とか、

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建物が、被災したそのまんまなんだな、とか、

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それでも、そこにたくましい命があるんだな、とか。

そのくらいしかわからない。
 

でも、これを一人でも多くの人に伝えなければならない。

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『現代の図書館』が届いた♪

『現代の図書館』vol.50 no.2(社団法人日本図書館協会発行)が届きました

2012081213360001

今号のテーマは、「特集:ソーシャルメディアが広げる図書館の『輪』と『場』」。

私は「公共機関のソーシャルメディア活用―情報発信から情報共有・共感へ」というお題で寄稿させていただきました。

 

しかし、4月に書いて6月発行のはずが、どうして8月に・・・
私の書いた内容がいけなかったのか・・・とヒヤヒヤしました。

 

私は、公共機関のソーシャルメディア活用の成功事例として、佐賀県武雄市を挙げたんですね。

もしかして、それがまずかったのではと思ってみたり。

 

結局、そんなことはなく、勘ぐりすぎだったようですが

気になっていたのはこの件です。

日本図書館協会の見解・意見・要望
「武雄市の新・図書館構想について」

続きを読む "『現代の図書館』が届いた♪"

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