「標題」か「表題」か
「標題」と「表題」。
この使い分けはどのように考えたらよろしいでしょうか。
こんな質問をいただきました。
拙著『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』(学陽書房)にも、「標題」という言葉が何度も出てきます。
でも、一部、「表題」となっていることにお気づきでしょうか。
それはなぜなのか?
どう使い分けるのか?
以下にまとめてみました。
辞書を引いてみると……
明鏡国語辞典によると、「標題」も「表題」も同じ意味であるようです。
ただし、
- 「標」の字は「目立つようにかかげる」の意(例:標語、標示)
なので、「標題のとおり」は、「(さっき既に)かかげた題(タイトル)のとおり」の意味になるかと思います。
ということで、一般的な「タイトル」という意味では、「表題」がいいのかもしれないと考えました。
『記者ハンドブック 第13版』(時事通信社)も『朝日新聞の用語の手引 新版』(朝日新聞出版)も、
- 「標題」は特別用語(「標題音楽」という固有名詞にのみ使う)
と書かれていて、一般的には「表題」を使うようです。
なぜ「標題」と書くのか
では、なぜ拙著には「標題」と書いたのでしょうか。
それは、建議「公用文作成の考え方」にそう書いてあるからです。
そのため、拙著の「第6章 情報の示し方(文章の書き方)」の以下の部分は私のミスです。
つい「表題」と書いてしまいましたが、「標題」で統一すべきでした。
- 「4 標題、見出しの付け方」(P.163)下から6行目
- 「6 標題・見出しの適切な文字数」(P.166)6・7・10行目
申し訳ありません。
修正をお願いします。
国も地方自治体も、「標題」と書きます。
ただ、特に根拠はないようです。
役所は「標題のとおり」とか「標記の件について」が好きなんです(笑)
国の某職員の方にも聞いてみましたが、
「役所の示す文書、という観点から重みを加えようとしている面もあるかもしれませんねー」
という程度で話は終わりました。
結局、どっちなの???
メディアでは「表題」を使うわけですから、一般的には「表題」と書いたほうが無難です。
ネット上には、いろいろな情報があふれていますが、真偽のほどは定かではありません。
例えば、”「表題」はタイトルのことで、「標題」は見出しのことだ”と書いている人もいましたが、そんなことは初めて聞きました。
参考:「表題」と「標題」の違いとは?メールの件名ではどちらを使う?
※これ↗↗↗が正しいという意味ではないのでご注意を❗
(正直言って、違うんじゃないかと思います💦)
以下は私の考えですが、
A:「告示・通知等」(拙著では「公用文I」)では「標題」
B:「解説・広報等」(拙著では「広報文」)では「表題」
が適切なのかもしれません。
「記録・公開資料等」(拙著では「公用文II」)については、
- 表記のルールはAに合わせる
- それ以外の語彙などの表現方法はBに合わせる
というのが新しい「公用文の考え方」です。
そのため、「標題」と書くことになりますかね。
でも、「標題」がイヤ(笑)
ただ、私は「標題」「標記」という言葉自体を使ってほしくないのです。
役所の起案(民間では稟議書にあたるもの)のタイトルは、ハンコで押したように
○○○○○○について
です。
そして、文頭に
- 標題について
- 標題の件について
- このことについて
に続けて「下記のとおり実施してよいか伺います」と書き起こします。
つまり、「標題」「標記」の「標」は、「この」という指示語と同じ働きをしているわけです。
これは役所特有の言語文化です。
一般的な文章では、文頭にいきなり指示語は使いません。
(指示語とは、「この」「それ」「あちら」などです)
特にメールなどで「標題のとおり」と書かれると、読み手はいったん標題に目を戻すことになります。
その手間を読み手に強いるのは、望ましくありません。
そのため私は、指示語としての働きを持つ「標」を、むやみに使ってほしくないと考えるのです。
※「標語」や「標的」までダメだとは言っていません。
もっと言えば、わざわざ「タイトル」と横文字で併記・解説しなくてはいけないくらいなら、「題名」って書けばいいじゃないかとも思ったりしますが(笑)
いかがでしょうか。
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