丸暗記ではAIに勝てない……
前回に引き続き、
『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著/東洋経済新報社)
を読んだ感想というか、備忘録です。
本書によれば、AIは、
- 「係り受け」
- 「照応」(コソアド言葉が何を指すか、ですね)
は、得意
でも、「同義文判定」は苦手で、
「推論」はおそらく不可能だとか。
以下に、「同義文判定」と「推論」の例をご紹介します。
■「同義文判定」の例
「同義文判定」とは、例えば、
「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」
という文と、
「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」
という文が表す内容が、同じかどうかを問うものです。
これについては、ネット上で、
「幕府が大名から命じられるわけないだろ」
など、「問題文がおかしい」という指摘も
かなりあったようです。
確かに、おかしいのですが、だからこそ、
「違う」と気づきやすいと思うのですが……
調査結果は、中学生の正答率が57%、高校生が71%。
同じか異なるか、二者択一問題なので、
サイコロを振って適当に答えても
正答確率は50%程度のはず。
つまり、「中学生の正答率はサイコロ並み」
と著者は嘆いています。
まぁ、私としては、著書や講演などで、
受動態は理解しにくいので使わないほうがよい
と書いたり話したりしていますので、
これまた「やっぱりね~」と思ったのですが
■「推論」の例
「エベレストは世界で最も高い山である」
という文を読んで、
「エルブルス山はエベレストより低い」
という文が正しいかどうかを問うのが「推論」の問題です。
エベレストが一番高いなら、他の山は全部、
エベレストよりも低いんだな
と、書かれていることを元に、
書かれていないことも推測できれば
答えられるわけですね。
著者によれば、これは、人間界の常識を知らない
=「常識のない」AIにとって、とても難しいことで、
おそらく永遠に不可能だとのこと。
では、人間が圧勝かというと、そうではなく、
このような「推論」の問題の正答率は、
中学3年生で64.6%、高校2年生で68.5%。
ちなみに、このような推測ができないと、
- 「エルブルス山はエベレストより低い」
- 「富士山はエベレストより低い」
- 「高尾山はエベレストより低い」……
とあらゆる例を覚えなくてはならなくなります。
年代や地名などの丸暗記をするのであれば、
AIには勝てませんよね
うーん……
続きは次回に~
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