Facebookページの活用 ―佐賀県武雄市の公式Webサイトウォッチング
■公式WebサイトをFBページに移行
―佐賀県武雄市、自治体で初
<佐賀県武雄市は8月から、公式ホームページを交流サイト「フェイスブック」(FB)に移行し(図1)、従来のホームページを閉鎖した。FBへの完全移行は自治体で初。アクセス数は移行後3週間で約24万件に達し、福井市や福岡市から行政視察が相次ぐなど注目度も高い>とのこと(8月27日付産経新聞)。今回は、武雄市FBページを通して、自治体がFBページを活用するメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
図1 佐賀県武雄市のFBページHOME
一般的な自治体Webサイト同様、「くらしの便利帳」などの基本メニューや、災害情報、新着情報が表示されている。
■FBページ利用の目的
―コミュニケーションの活性化
武雄市の公式サイトとなったFBページには、「武雄市Facebookページへの移行に関するよくある質問」があります。「多くのSNSがあるなか、なぜFacebookを採用したんですか?」という質問への回答が、FBページへ移行した目的であり、メリットと言えるでしょう。回答は次のようなものです。
- Facebookは、全世界で約7億人が登録する世界最大のSNSであり、今後も発展が期待できる。
- Facebookページは利用登録していなくても誰でも閲覧できる。
- 運営者はFacebookアプリケーションによりFacebookページをカスタマイズできる。
- 「いいね!」ボタンやコメントなどのコミュニケーションを活性化する機能が充実している。
以上の理由により、Facebookを活用することとしました。
このように、FBはコミュニケーションの活性化に便利なツールです。私自身も、FBを通して学生時代の友人と再会したり、中野区在職中にお世話になった区民とつながることができたり、各地の自治体職員と友達になったりして、日々、コミュニケーションをとることができています。
■手軽さが「ウリ」
―ワンクリックのコミュニケーション
コミュニケーションが活性化する理由は、FBの持つ様々な機能の手軽さにあります。FBは、誰かの投稿にコメントをつけるのも、投稿を「シェア」する(自分のウォールに転載することで共有・拡散する)のも簡単。また、投稿についている「いいね!」は、ワンクリックでコミュニケーションをとることができる機能です(図2)。
図2 武雄市FBページのウォール
「いいね!」は、「見たよ」あるいは「おもしろいね」、「ステキ」といった色々な意味を含む。悪い出来事などでも、「同感」という意味で使うことがある。
FBは、市民だけでなく、自治体職員にとっても手軽なツールです。Webサイトやブログのように、まとまった文章を書かなくても、ほんの数行のメッセージや、写真、動画を気軽に投稿することができるからです。公式サイトに掲載するほどでもないような、ちょっとした地域情報の投稿でも、意外にたくさんの「いいね!」やコメントがつきます。FBでは、たわいない投稿のほうが反応が高い傾向があるようです。そういった反応がリアルタイムでわかることも、メリットと言えるでしょう。
さらに、東日本大震災の経験から言えば、「クラウド」ツールであることも見逃せません。いつでもどこでもアクセスできて、閲覧、投稿も簡単です。
■アクセシビリティに課題も
―Webサイト併用で解決!
FBページにある「くらしの便利帳」などの基本コンテンツは、市の公式サイトを読み込んで表示させています。「インラインフレーム」という手法です。そのため、どのページもURLが同じになってしまうという弊害があります。例えば、「くらしの便利帳」ページのURLは「https://www.facebook.com/takeocity?sk=app_236453269710449」ですが、その中のメニューをクリックした「市民窓口のご案内」ページも同じURLです。そこにある「市税各種様式のダウンロード」をクリックして表示されるページも、やはり同じURL。これでは、「このページを見て」とURLをメールで送ったり、ブックマークをしたりするのに不便です。
また、視覚障がい者など音声読み上げソフトでサイトを「聞いている」利用者にとっては、きちんと読み上げられないなどの「壁」があります。アクセス制限を実施している組織内や海外では閲覧できないとか、スマートフォン用のFBページでは、ウォールしか閲覧できないといった問題も。
元の公式Webサイトは残して、FBページと選択できるようにすればいいのに……と思っていたら、結局そのような仕組みに変わったようです。そのため、現在、デメリットはほとんど無いと言っていいのではないでしょうか。11月7日から、市の特産品を販売するFBページ「F&B良品TAKEO」も始めたようですよ。
コミュニケーションの活性化は、地域活性化や広聴機能の拡充、ひいては顧客満足度の向上につながるでしょう。FBは「肯定の文化」とも言われています。一方的に非難するのではなく、前向きで建設的な意見をいただき、市民との暖かい「つながり」を構築するには、最適のツールかもしれません。
小田 順子 プロフィール
1965年生まれ。1992年4月、東京中野区に入区。区立小学校、国民健康保険課、情報システム課、広聴広報課、保健所を経て、2007年3月退職。現在は広報コンサルタントとして、自治体、公益団体、NPO法人や士業事務所など公益性の高い組織・個人を支援。 日本言語学会会員。日本災害情報学会会員。放送大学大学院修士課程文化情報プログラムに在籍
※この記事は、地方自治情報センター発行『月刊LASDEC』平成23年12月号に執筆した記事をHTML化し掲載しています。掲載に当たっては、地方自治情報センターの承諾のもと掲載しています。
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