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ソーシャルメディア利用の目的 ―「まんべくん」事件の教訓

■イマドキの生活者消費行動モデル ―ソーシャルメディア活用のヒント

 株式会社電通は、「来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費者行動モデル」として、「SIPS」を提唱しています(※1)。これは、以下の4要素の頭文字です。

S(Sympathize : 共感する)
I(Identify : 確認する)
P(Participate : 参加する)
S(Share & Spread : 共有・拡散する)

 このモデルではさらに、「参加」のレベルを4段階に分けています。

  1. ゆるい参加者
  2. ファン
  3. ロイヤルカスタマー(支援者)
  4. エバンジェリスト(伝道者)

 「ゆるい参加者」は、Twitterでフォローしたり、Facebookで「いいね!」をしたりする程度ですが、「ファン」になると、コメントや、会員登録するといった、やや手間のかかるコミュニケーションをとってくれます。支援者は、さらに建設的な意見をくれたり、インターネット上で批判された際も擁護してくれたりするレベル。伝道者に至っては、私的に応援サイト・コミュニティを立ち上げたり、他の人に売り込んでくれたり、競合の批判をしたりします。

 自治体も、イマドキの生活者の行動モデルから、ソーシャルメディアを活用するヒントが得られるのではないでしょうか。

※1 SIPS 株式会社電通のサイトより http://www.dentsu.co.jp/sips/

■「炎上」でTwitterアカウント停止 ―長万部町が公式サイトで謝罪

 たくさんのファンと、支援者、伝道者を獲得していた「まんべくん」は、北海道長万部町の公式キャラクターです。Twitterでのつぶやきで人気に火が付き、フォロワー数は一時期、10万人にも届く勢い。おかげでグッズが売れ、イベントのたびに多くの人が集まりました。

 ところが現在は、そのTwitterアカウントは停止されています。「どう見ても日本の侵略戦争が全てのはじまりです」といった、まんべくんのツイートが原因です。終戦記念日の前夜、一連の発言に対する非難の声と擁護する声が、ネット上で瞬く間に広がりました。「炎上」と呼ばれる状態です。翌日には、長万部町に電話・メールが殺到。公式サイトへのアクセスも急増し、サーバーはダウンしてしまったようです。

 まんべくんのTwitterアカウントは、長万部町出身のWebサイト制作会社の社員が運営していました。同町は、費用を払って委託していたのではなく、キャラクターの利用を許可していただけです。まんべくんの発言は、町の公式見解ではありませんが、結果、同町が公式サイトで謝罪するという事態に。

 これは、まんべくんの発言に共感した人と、それを非難する発言に共感した人が、それぞれに確認し、参加し、共有・拡散した結果と言えるでしょう。ソーシャルメディア時代の生活者行動の典型ですね。

■ソーシャルメディア利用の目的 ―「まんべくん」のマーケティング

 まんべくんは、毎朝100人以上のフォロワーに、おはようのあいさつ「おはまんべー!」をするなど、マメにコミュニケーションをとっていました。8歳の男の子という設定だったらしく、以下のようなかわいいツイートが魅力的です。

  • (V)(๑◉∀◉๑)(V)ペロペローッ!
  • (⊃^-^)⊃ぎゅー RT @○○○: @manbe_kun まんべくん私には一生ぎゅーしないつもりかよバカ好き!!
  • コクリ RT @○○○: @manbe_kun 長万部ってJRで行ける?18きっぷで北海道行ってみようと思うの。
  • コクリ RT @○○○: @manbe_kun ルカルカ☆ナイトフィーバー、一緒に踊りたいから覚えようと思って!!教えてー!!
  • いいよッ!RT @○○○: @manbe_kun はじめまして! テレビで見てから好きになったよ☆いつか会いに行っていいかな?
    (8月15日の@manbe_kunのツイートより)

 一方で、「殺す」、「この豚野郎!」、「妊娠させたい」などの過激な発言も多く見受けられます。まんべくんは「毒舌」を売りにしていたそうで、過激な発言は、それだけ反応もたくさん得られたのでしょう。批判的な意見が殺到しても、「話題になればそれでいい」と意図的にあおる「炎上マーケティング」と呼ばれる手法があります。まんべくんの毒舌も、その一種だったのかもしれません。そうであれば、自治体の公式キャラクターとしては、ふさわしくないですよね。

 自治体がキャラクターやソーシャルメディアを使う目的は、単なる知名度向上=目立つことではないはずです。地域の魅力を発信し、ファンや支援者、伝道者を作ること。その結果、まちが元気になり、観光客や移住者、企業を誘致できる。それならば、数より質です。Twitterのフォロワー数やメディアの露出度を競うよりも、前向きで建設的な、暖かい「つながり」を作るコミュニケーションが必要です。

■ソーシャルな場で求められること ―ポジティブなコミュニケーションを

 ソーシャルメディアは、直訳すれば「社会的媒体」です。利用にあたって最低限、必要とされるのは社会性。社会の一員として、ルールやマナーを守り、社会に貢献することです。ソーシャルメディアという媒体=ツールを活用するには、コミュニケーション力、他者と共感できる感性、ファンや支援者を得られる人間的な魅力が必要とされるでしょう。

 例えば異業種交流会に参加し、「やっぱり第二次世界大戦は、日本の侵略戦争から始まりましたよね~」と言われたらどうでしょうか。多くの人の聞いているところで意見を求められても困惑しませんか。徹底的にディベートをする場ならともかく、コミュニケーションが目的の場の話題としては、ふさわしくないでしょう。社会人は、戦争に関する知識があり、歴史的・空間的に広い視野を持って考えることができます。少なくても、善か悪かの二元的な思考に基づき、140文字で戦争を語るのが難しいことはわかるでしょう。

 奇をてらった発言より、相手が楽しくなるような話題や、有益な情報を提供したほうが、ポジティブなコミュニケーションをとることができます。「人を呪わば穴二つ」という言葉があるように、安易に、あるいは感情的に、辛辣な他者批判をすれば、それは自分に返ってきます。活字の場合はなおさらです。インターネットでは延焼速度も加速します。

 毒舌は毒を呼び寄せ、ポジティブな言葉はポジティブな人を呼び寄せるでしょう。どのような観光客、移住者、企業に来てもらいたいですか。どのような人が、まちを盛り上げることができると思いますか。

小田 順子 プロフィール

1965年生まれ。1992年4月、東京中野区に入区。区立小学校、国民健康保 険課、情報システム課、広聴広報課、保健所を経て、2007年3月退職。現在は広報コンサルタントとして、自治体、公益団体、NPO法人や士業事務所など 公益性の高い組織・個人を支援。 日本言語学会会員。日本災害情報学会会員。放送大学大学院修士課程文化情報プログラムに在籍

※この記事は、地方自治情報センター発行『月刊LASDEC』平成23年11月号に執筆した記事をHTML化し掲載しています。掲載に当たっては、地方自治情報センターの承諾のもと掲載しています。

 

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