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ソーシャルメディアの活用 ―ローカルガバメント3.0

■ソーシャルメディアの台頭
 ―電子掲示板からTwitter、Facebook へ

 この連載も新しい年度を迎えました。平成22年度は文章の書き方を中心としてきましたが、今年度は もう少し広く、コミュニケーションを話題の中心にしていきたいと思います。

 Webのコミュニケーションツールというと、以前は電子掲示板とメーリングリストくらいでしたよね。その後、「ブログ」や「mixi(ミクシー)」、「GREE(グリー)」などのSNS(ソーシャルネットワーキン グサービス)、「YouTube(ユーチューブ)」、「ニコニコ動画」、「Ustream(ユーストリーム)」など動画関連のサービス、「Twitter( ツイッター)」、「Facebook(フェイスブック)」など、ミニブログのようなSNSなど、「ソーシャルメディア」と呼ばれる様々なツールが次々と登場しました。

 これらは、誰でも簡単に、しかも無料で利用できます。個人が自由に情報発信できるようになり、利用者は増え続けています。自治体も、住民とのコミュニケーションに活用することを期待されているので はないでしょうか。

■マーケティング3.0
 ―人間中心マーケティング

 著名な経営思想家、フィリップ・コトラーは、現代は「マーケティング3.0」の時代であると著書に記しています。『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』(朝日新聞出版) によれば、

●マーケティング1.0 →製品が中心
  マス市場に向けてアプローチする。良い製品を作れば売れるため、製品開発を重視する

●マーケティング2.0 →消費者が中心
  消費者をセグメント化(分割)し、それぞれに最適な製品・サービスでアプローチする(差別化)

●マーケティング3.0 →個々の人間が中心
  大衆でもなく、消費者でもなく、一人ひとりの人間に対してアプローチする

 世界的な経済危機の時期に、企業は世界をよりよくすることを目的とし、<問題に直面している人々に解決策と希望を提供>します。<より高い次元で消費者を感動させる>のです。これを可能にしたのは、 ソーシャルメディアの台頭であると書かれています。

■ローカルガバメント3.0
 ―人間中心のコミュニケーション

 これは、自治体と住民との関係にも当てはまるのではないでしょうか。「住民」というひとくくりの存在としてとらえるのは、ローカルガバメント1.0の時代。「高齢者」や「障がい者」、あるいは「未就学児の保護者」、「ビジネスパーソン」などといったセグメント化をすることで、その「カタマリ」ごと の特徴をつかみ、最適な行政サービスを提供するのは2.0。しかし、同じカタマリに振り分けられた人でも、状況や価値観はそれぞれです。何千人、何百人の中の一人としてとらえるのではなく、○○町3丁目の田中太郎さんとか、鈴木青果店の鈴木花子さんといった「個」に焦点を当て、サービスを提供する時代になってきているように思います。

 情報に関しても同じです。インターネットの普及に伴い、「住民」という大きなカタマリに向けて、Webサイトでまとめて情報を公開することができるようになりました。その後、「高齢者向け情報」、「子育て情報」 と細分化したカタマリに向けて情報発信をすることが進んできています。サイトのRSS(更新情報)やメー ルマガジンを配信することで、興味のある話題についてのみ情報提供することが可能です。そして今後 は、ソーシャルメディアを活用した対話型・協働型コミュニケーションが重要になってくるのでしょう。

■協働型コミュニケーション
 ―「口コミ」の威力

 私は、初めてのお店に食事に行くとき、「食べログ」などの口コミサイトを見ます。実際に食事をしてきた人たちの「口コミ」をチェックして、そのお店に行くかどうか、どのようなメニューを注文するかを考えるのです。旅行や出張の宿泊先も同じです。サービスを提供する側の説明より、利用者の感想のほうが参考になることが多いからです。「食べログ」などのWebサイトは、消費者の評価自体が重要なコ ンテンツとなっているわけです。

 音楽やお笑いなどの業界でも、ソーシャルメディアでの反響を基に人気度を測るようになってきています。CDの販売枚数や視聴率といったデータだけではなく、Twitterのフォロワー増加数や言及された数、YouTubeでの再生回数なども加味して、順位を決めることが主流になりつつあります。

 オンライン百科事典の「Wikipedia」も、参加者の書き込みにより膨大な情報が掲載されています。 正確性は保証できませんが、便利ですよね。参加者との協働で作り上げるWebコンテンツというのも、 魅力的だと思いませんか。自治体でも何か楽しいことができそうな気がします。

■対話型コミュニケーション ―「からむ」ことの価値

 最近はTwitterのIDを取得する自治体が増えました。Facebookの利用を検討しているところもあるようで、ある自治体職員から、「個人的に練習中です」と友達リクエストをいただきました。

 これらのメディアは、手軽な情報発信ツールとして活用できますが、より効果的な使い方としては、 「対話ツール」として使うことが考えられます。良い意味で「からむ」のです。例えば、1対1の会話をイメージしてください。一方的に話し続け、あなたが話すと相づちも打たない人をどう思いますか。無視されるのは、あまり楽しいことではないですよね。

 私のたわいない書き込みに、「うんうん。それで、それで?」「えーっ!それでどうしたの?」などと返 してくれる自治体職員がいました。単純かもしれませんが、やはり好感を持ちます。Facebookで誕生日を知り、「おめでとう!」とメッセージをくださったり、書き込みを見て「肩こりにはこれが効きますよ!」な どと教えてくださったりする方に対しては、一度もお会いしたことがなくても、その人のことを応援したい、 何か役に立ちたいと思ってしまいます。職員の山田さんが好きだから、○○市役所に好感を持つ。「○○市のここが不満」と感じて、「だから一緒に改善して行こう」と思えることが、協働であり、自治ですよね。

 対話をとおして情報を共有し、共感を得てお互いに好感を抱く…これは、リアルな人間関係と同じです。すべての住民とお話しすることは物理的に不可能ですが、ソーシャルメディアがそれを可能にしてくれるのです。

 次回以降はTwitterなど具体的なツールの活用法を解説していきます。

 

小田順子プロフィール

1965年生まれ。1992年4月、東京中野区に入区。区立小学校、国民健康保険課、情報システム課、広聴広報課、保健所を経て、2007年3月退職。現在は広報コンサルタントとして、自治体、公益団体、NPO法人や士業事務所など公益性の高い組織・個人を支援。 日本言語学会会員。日本災害情報学会会員。放送大学大学院修士課程文化情報プログラムに在籍

※この記事は、地方自治情報センター発行『月刊LASDEC』平成23年4月号に執筆した記事をHTML化し掲載しています。掲載に当たっては、地方自治情報センターの承諾のもと掲載しています。

 

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