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行政の政策情報の伝え方 ―IメッセージよりYouメッセージ

■興味を持ってもらう ―読んでもらえなければ無いも同然

 施政方針や計画、予算決算などは、すべての人に知っていただきたいことです。しかし住民にとっては、命に関わる情報や、社会生活に密着した情報と比較すると、優先順位が低くなります。

 そのため、いくら分かりやすく書いたとしても、読んでもらえない恐れがあります。興味を持って読んでもらうためのポイントは、以下の3点です。

  1. 書く前に頭の中を整理する
  2. A4版1枚に概要をまとめる
  3. IメッセージよりYouメッセージを書く

以下に具体例を見てみましょう。

 

10月号「行政の政策情報の伝え方」を印刷して読む(PDFファイル 566.1KB)

 

 

■書く前に頭の中を整理する ―図式化して文章の構成を考える

 いきなり書き始め、思いつくままにすべて伝えるのではなく、まずは内容を整理して、文章の構成を考えます。頭の中を整理するには、次の手順で図式化すると効果的です。

(1) 伝えたいキーワードを書き出す

 頭に浮かんだことを単語で書き出します。

(2) 階層を考える

 書き出したキーワードの階層を考えます。

(3) 関係を考え図式化する

 キーワードの配置や矢印によって、関係を示します(下図参照)。うまく描けない場合は、親しい人に説明を聞いてもらうのも効果があります。

Lasdecs1010_2

■概要をA4版1枚にまとめる ―資料とパブリシティとWeb原稿

 行政の施策情報は、ときに膨大な量の資料が必要になります。例えば、新規事業や国・都道府県への補助金申請は、起案の添付資料が冊子状になることも。しかし、一生懸命に作っても、すべてを読んでもらうことは期待できません。「で?結局どういうこと?」と聞かれてしまうのが「オチ」です。

 そのため、A4版1枚で概要を伝え、興味のある部分は詳細を読んでもらうようにします。概要版は、起案の添付資料だけではなく、パブリシティにも使え、Webサイトに掲載するときの原案にもなります。

 概要版の文書構造は、頭の中を整理するために描いた図式を活用すると分かりやすくなります。文章構造は、連載第2回目の「分かりやすいWeb 文章の構造」(平成22年5月号)でお伝えしたように、「逆三角形の文章構造」で書きます。こうすることで、迅速に、かつ効果的に情報を伝えることができます。

■IメッセージよりYouメッセージ ―読み手を基点にして書く

私はこれをやります、私はこう思いますと、自分基点の情報は「I」メッセージです。自分のことばかり書いてあると、読み手は面白くありません。「この制度の実施で、あなたはこんな影響を受けます」と、「You」を基点にしたメッセージのほうが、読み手の興味をひくことができます。

 起案の場合は、読み手が上司や関係部署の職員です。興味のあることは、予算措置や必要な人員、他の部署への影響などです。パブリシティの場合は報道機関の記者ですから、その事業が社会的にどのような影響あるいは価値があるのかに興味があるでしょう。Webページの場合は住民ですね。

 特にタイトルは意識してつけましょう。起案の「○○について」というタイトルで「このことについて、……」と書き始める表現は、住民や報道機関基点で見ると、違和感があります。タイトルや見出しは本文の要約なので、本文に書いてある内容が前提です。

■タイトルに工夫を ―マジックワード「大変なんです!」

 NHKの記者として32年間勤めた池上彰さんは、「マジックワード」の活用を提案しています。これは、<相手に自分の話を面白く、興味深く聞いてもらいたいときに効果のある言葉>です。伝えたいことの前に「大変なんです!」または「どうしても報告したいことがあります」という言葉をつける。すると、「それは、○○が△△なんです!」と結論部分を続けて言いたくなります。これがタイトルになるのです。文章ができあがったら、「大変です」を削除します。<そうすると、勢いのある、説得力のある文章がつくれます>(「わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書) 」より)。なるほど、おもしろいですよね。

 例えば、「ミニブログ『ツイッター』の利用について」という起案であれば、パブリシティでは「(大変です!)全職員が『ツイッター』アカウントを取得!」(佐賀県武雄市)というタイトルになります。住民向けには、「(どうしても報告したいことがあるのです)9月1日から市の全職員が『ツイッター』でご意見をうかがいます」などでしょうか。

 この「大変なんです」は、住民にとって大変なことです。「どうしても報告したいこと」も、住民に関係のないことだと、「それがどうしたの?」と言われてしまいます。住民基点でよくよく考えてみたけれど、別に大変ではないし、住民への影響は特にない。報告するほどでもない……という場合は、そもそもその事業を実施する必要があるかどうか検討したほうがいいのかもしれません。

 

小田順子プロフィール

1965年生まれ。1992年、東京中野区に入区。小学校、国民健康保険課、情報システム課、広聴広報課、保健所を経て、2007年3月退職。現在は広報 コンサルタントとして、自治体、公益団体、NPO法人や士業事務所など公益性の高い組織・個人を支援。日本災害情報学会会員。放送大学大学院修士課程文化 情報プログラムに在籍

※この記事は、地方自治情報センター発行『月刊LASDEC』平成22年10月号に執筆した記事をHTML化して掲載しています。掲載に当たっては、地方自治情報センターの承諾のもと掲載しています。

 

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