分かりやすいWeb文章の要素 ―140文字のWeb文章「Twitter」に見る自治体のCRM
分かりやすいWeb文章とは、どのようなものでしょうか。分かりやすさを左右する要素は、「専門用語を使わない」「常用外の漢字を使わない」など、用字・用語だけではありません。Webサイトという便利なツールであるからこそ、様々なことに配慮しなくてはならないのです。
そこで、まずは、分かりやすいWeb文章に必要な要素を考えてみたいと思います。
■分かりやすいWeb文章の要素
四つの「構造」と一つの「マインド」
Web文章の分かりやすさを左右する要素は、大きく分けると次の五つです。
- サイト構造(Library)
- 文書構造(Document)
- 文章構造(Writing)
- 文の構造(Sentence)
- マインド(Customer Relationship Management)
例えば、「明日、歯医者に行きたいけど、保険証を紛失した!」と、困っている住民がいたとします。
「役所は何時からやっているんだろう?」「保険証をもらうには何が必要なんだろう?」。そんな疑問を解消すべく、役所の公式サイトにアクセスします。窓口の開設時間、保険証の再交付に必要なもの…どんなに分かりやすい説明が掲載されていても、そのページを探し当てることができなければ、情報がないのと同じことです。Web文章が分かりやすいかどうかは、サイトにアクセスした時点から始まっているのです。
1 サイト構造― Library
スーパーマーケットを思い浮かべてください。お客様が店に入って商品を見るルート、購入を決めてレジへ行くルート。これを設計することが「導線設計」で、サイト構造を決める時の根拠となるものです。そのお店にすばらしい商品が用意されていたとしても、なかなか見つからない。それでは、急いでいるお客様は買わずに帰ってしまうことでしょう。
また、実際にお客様がどういった動きをするかを常に観察することが「動線観察」。Webサイトでいえば、アクセス解析結果や市民からの問い合わせ・苦情が、サイト構造を改善する手がかりとなります。
2 文書構造― Document
「文書」とは、ドキュメントのこと。つまり、写真や図表、レイアウト、デザインなど視覚的な要素も含めたものを、ここでは「文書」と呼んでいます。
「メラビアンの法則」によると、純粋に言語だけで伝わる情報より、耳で聞いたり、目で見たりしたことの影響のほうが、圧倒的に大きいようです。Webサイトは、図表や写真を使ったり、リンクボタンの大きさや色、位置に配慮したりと、視覚的な面での工夫をすることも重要です。
Tips:メラビアンの法則
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンの実験によれば、「視覚」「聴覚」「言語」が与える影響の割合は、
- Visual(視覚により伝達される情報) 55%
- Vocal(音声により伝達される情報) 38%
- Verbal(言語により伝達される情報) 7%
であるという結果が出た。
これは、<「視覚」「聴覚」「言語」で矛盾した情報が与えられたときに、人はどれを優先して受け止め、話者の感情や態度を判断するのか>を確かめるために行った実験だが、視覚情報の与える印象は無視できないであろう。
例えば、とても楽しいイベントの情報が書かれているウェブページであっても、難しい文字がぎっしりと並んでいれば、直感的に楽しそうだとは感じられず、読まずにほかのページに行ってしまう恐れもある。
(データ及び<>部分は、「天使と悪魔のビジネス用語辞典」 より引用)
3 文章構造― Writing
これは、文書(ドキュメント)の中の文章(ライティング)の部分を指します。伝えたいことは何なのか、どのような順番で伝えるのが効果的なのか。これについては、次号以降で詳しくご説明したいと思います。
4 文の構造― Sentence
通常は句点(。)までが1文です。その一つ一つの文に関しても、分かりやすくするコツがあります。用字・用語についての注意事項もここに含まれますが、それだけではありません。これも、回を改めて詳しくご説明します。
5 マインド― CRM
行政もCRMの時代です。CRMは一般的にはCustomer Relationship Managementの略ですが、自治体ではCustomer をCitizenとする例も増えています。一方的な情報提供ではなく、市民との関係性の中で、市民が求めていることを知る。そんなマインドが必要なのだと思います。
「どう書くか」の前に、「何を書くか」。それが、分かりやすいWeb 文章を書くコツです。
■140文字のWeb文章「Twitter」に見る
自治体のCRM
ここでは強力なCRMツール「Twitter(ツイッター)」をご紹介します。
Twitterは、ミニブログのようなものです。一度に掲載できるのは140文字で、文章を書くというより「つぶやく」。「おはよう」とか「わー! 電車に乗り損ねたー!」などのたわいないつぶやきが並びます。
日本での利用者数は、ここ1年ほどで爆発的に増え(図1)、総務省など複数の行政機関や、鳩山総理始め著名人もIDを取得し、活用しています。
図1:平成21年1月~12月でtwitter.comへの日本からのアクセス数は9倍以上に(Google Trends for Websitesで見るtwitter.comへの日本からのアクセス)
平成22年2月17日に開催された「青森県第4回Webマーケティングセミナー」では、セミナーの様子をリアルタイムで動画配信し、同時に Twitterでの参加も呼び掛けていました(図2)。
図2:セミナーのライブ映像。青森県庁の職員がプレゼンテーションをしているスライドには、次々とTwitterのつぶやきが表示された
Twitterユーザーからは、「いわゆるお役所とこれだけ一体感をもったことはない」「情報手段が便利になっていくことによって、ますます情報格差が 広がっていく」などのつぶやきが。
セミナーのパネルディスカッションの中でも、「情報は発信するだけではダメで、共有、共感が必要だ」という発言がありました。そのようなマインド に基づき、Twitterを使って声を聴き、共感を得たことは、非常に意義のあることだったのではないでしょうか。
小田順子プロフィール
1965年生まれ。1992年、東京中野区に入区。小学校、国民健康保険課、情報システム課、広聴広報課、保健所を経て、2007年3月退職。現在は広報コンサルタントとして、自治体、公益団体、NPO法人や士業事務所など公益性の高い組織・個人を支援。日本災害情報学会会員。放送大学大学院修士課程文化情報プログラムに在籍
※この記事は、地方自治情報センター発行『月刊LASDEC』平成22年4月号に執筆した記事を加筆訂正し、HTML化して掲載しています。掲載に当たっては、地方自治情報センターの承諾のもと掲載しています。
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