「自治体クラウド」が電子申請サービス再構築の好機となる・・・のか
「自治体クラウド」が電子申請サービス再構築の好機となる (日経BP ITPro)より という記事を読みましたが、課題てんこ盛りですね・・・。
朝日新聞の記事によると、「電子申請、19府県で休止・縮小 財政難が背景に」。
また、「国の電子申請、利用率10%未満が3割 運用コスト割高」だそうです。
利用率の割に費用がかかる・・・事業仕分けの対象になりそう
活用できていれば、人件費を抑えることができて、財政難にはならない・・・はずですけどね
この原因を、安達和夫氏(リサーチネットワーク 代表取締役研究員/東アジア国際ビジネス支援センター事務局長)が、「電子申請は本当にコスト高をもたらすのか?」で詳細に分析し、改善策を提言しています。
具体的な数値に基づき、おっしゃっていることはある意味正しいのですが、もと現場職員としては、非現実的な部分がどうしても見えてしまう・・・。
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というわけで、以下、論文調に思うままを書き連ねてみました。
例えば、「自治体クラウド」により、
行政機関同士が電子化により情報が連携されていれば、添付書類を入手するための申請は必要ないことになる
とあるが、申請不要になる業務は、住民票などごく一部の申請業務しか思い浮かばない。
また、年金の例をあげているが、本来、年金と健康保険の連動こそが、資格適正と収納率向上、つまり、年金、国保の財源確保及び自治体の財政健全化に欠かせない要素だ。
これは自治体間の連携だけでは実現しえない。
個人についても、パソコン保有率が内閣府の調査では2009年末で73.2%、インターネット普及率も総務省の調査では2008年末で91.1%と大多数 の家庭に普及しており、簡便な申請画面を提供することで、紙の書類に申請内容を記載するのに比べて時間短縮が期待できる。
とある。
電子申請をする人にとっては、現状の画面操作は難しい。人間の自然な目の動きや感性にマッチしていないつくりで、私ですら操作しにくい。
区市町村の採用試験にエントリーするのにも、わかりにくくてエントリーできなかった子を、私はたくさん知っている。
しかし、それを改善したところで、解決策にはならない。
パソコンの操作が難しい以前に、制度を理解することが難しいのだ。
この項目には何を入力するのか?という疑問。
お役所用語、役所の常識を一般市民は知らない。私はパソコンは得意だが、確定申告がスラスラできるかどうかは別の話である。
では、間違えていてもとりあえず入力したらどうなるのか。
エラーで先に進めないか、間違った内容で申請してしまうか、いずれかである。
申請書の再提出に当たっても、すでに提出した申請書は電子化されているので、不備の部分を修正するだけで済ますことが可能である。
というのも、言うのは簡単だが、不備はだれが見つけるのか。誰が修正するのか。修正の連絡はだれがするのか。システムか、職員か・・・。
さらに、
電子申請システムに連動したワークフロー管理システムなどによる審査、決裁処理の時間短縮や審査に当たる職員数の削減が可能になる
・・・はあり得ない。
そもそも、役所とは言え、今やほとんどの業務が「担当→係長→課長」程度だ。
逆に、部長や区長・市長の決裁が必要な案件は電子化できるとは思えない。例えば、私が担当していた、滞納者の財産差し押さえなどがそうだ。
医療についても言及されていて、
例えば、2011年にオンライン請求が義務付けられているレセプトのオンライン化では、日本医師会がその撤廃を主張し、さらには訴訟にまで発展する事態となっている。
とある。
そういえば私は保健所で、予防接種の予診票を集計し、各医療機関に支払うという業務も担当していたことがある。
これは、医師会との連携が不可欠であり、役所だけではどうにもならない。国民健康保険しかり、事情は同じで、改善に至らなかったのは苦い記憶だ。
それでも、私は自治体の公式サイトの管理運営、つまりワークフローを電子化した。
住民票などの発行で一日中追われている職員も、積極的に協力してくれた。
窓口に立ちながら、電話対応しながらも、空き時間でサイトを更新する。そんなスーパー公務員が何人もでてきた(職員4人に1人はウェブを更新するようになった)。
現場の職員こそが、本当に住民のためになること、利便性が向上するヒントを知っている。
システムありき、よそからの押し付け、納得なき説得では人は動かない。変わらない。
最善の方策は・・・各自治体の電子化、クラウド化プロジェクトに私を入れることだ(笑)
今日はちょっと硬いネタでした
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