日本語が亡びるとき ―英語の世紀の中で
日本語は不滅だと思いますか?
日本語がなくなるなんて、想像がつきませんよね。
でも、『日本語が亡びるとき』を読んで、ぞっとしました。
私たちは当たり前のように、日本語で書かれた本を読んでいますが、普段話している言葉で書かれた本がこんなにたくさんある国なんて、世界中で、そんなに多くはない。
そして、日本文学は世界の読書人の間でも、「一応、名の通った<国民文学>のひとつとして流通している」(「」内は本文からの引用部分)という事実。
その日本文学を著した日本語が亡びるって、いったい・・・。
ひとことで言ってしまえば、著者は、日本の国語教育について、憂え、嘆いているのです。
「国語教育の理想を、すべての国民が書けるところに設定したということ、国民全員を<書く主体>にしようとしたこと――それは、逆に言えば、国語教育の理想を<読まれるべき言葉>を読む国民を育てることに設定しなかったということである。」(p.302)
ここで言う<読まれるべき言葉>とは、例えば、『浮雲』であったり、『たけくらべ』であったり、『にごりゑ』、『坊ちゃん』、『三四郎』、『歌行燈』、『細雪』などなどの優れた作品のことを指しているのでしょう。
そして、国語教育の理想に基づく施策としては、常用漢字(難しい漢字は使わない)、表音主義(”とほい(遠い)”→”とおい”)、薄っぺらな、平易な内容の国語の教科書・・・などが挙げられています。
みんなが読めて、書けるように、誰でもわかる易しい言葉で書かれた、誰にでもわかる内容の文章ばかりを読んでいることは、教育ではない・・・と。
一方で、伝達手段が発達し、「地球はいよいよ小さくなり」、英語という<普遍語>が、地球全体を覆うまでの規模になってきた。
そこに追い打ちをかけるように、インターネットという技術が発達し、ますます、英語の威力が強くなってきた。
・・・こんな状況では、<叡智を求める人>が、<国語>で書かれたテキストを真剣に読まなくなる。
単純に言ってしまえば、世界の重要な出来事、政治、文学などは英語で読み、スポーツニュースや芸能ネタなどのみ、日本語で軽く読み流す。
そうして<読まれるべき言葉>は、読まれなくなり、「知的、倫理的、美的な重荷を負う」日本語は亡びてゆく。
確かに、中高生でも近代文学は「難しい、つまらない」と言って読もうとしませんね。
私がそのくらいの年頃に『坊ちゃん』を読んだときは、とてもおもしろいと感じたのに。
これが時代の移り変わり、ジェネレーションギャップではなく、日本語が亡びゆく過程だとしたら・・・。
島国であるからこそ、はぐぐまれてきた美しい日本語。
一方で、他国に侵略され、亡びる恐れがなかった日本語を、日本人は大切に思わない。
本書はこう結ばれています。
もし、日本語が「亡びる」運命にあるとすれば、私たちにできることは、その過程を正視することしかない。
自分が死にゆくのを正視できるのが、人間の精神の証であるように。
追伸
これと同じようなことが書かれているサイトがあります。
人間にとって感情を表現する「母国語」をきちんと話せるということは、とてもとても大切なこと
・・・と(「海外生活の思い出 ―国際人になる!24のエピソード」より)。
これは、アメリカで過ごし、公立の小学校で英語講師として1年間小学生500名程に英語を教えていた、ファイナンシャルプランナーの山中先生のサイトです。
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