言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか
『言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか』(酒井邦嘉著/中央公論新社/2002.7)を読みました。
「言語学は心理学の一分野である」とノーム・チョムスキーは言います。
また、テレビの取材で「言語とは何かをひとことで言い表してください」と言われた酒井邦嘉氏は、「言語とは、心の一部である」と答えています。
心が言葉を生み出すとすれば、それは脳で決まっている。
自然言語というのは脳によって決められた「文法」に従っているのです。
そんなことはない。
学校で習った文法は、難しくてよくわからない。
文法的におかしい文章を書いたり話したりすることは多いじゃないか。
では、次の文を読んでどう思いますか。
- 無色の緑の観念が猛烈に眠る
- 眠る猛烈に観念緑の無色の
どっちも変です。
でも、2.は特に、文法的にメチャクチャだ・・・ということは誰しもわかるはず。
日本語を母語として生まれ育った人は、そういった文法感覚――つまり、語順に関する感覚を自然に身につけています。
例え学校の文法のテストが0点でも。
逆に、どんなにかしこいおサルさんでも、語順は身につけられないそうです。
では、文法は脳のどこにあるのでしょうか。
実験の結果、左脳のブローカ野というところにあることがわかっています。
このブローカ野は、例えばスペリング――誤字脱字などを認識することとは別に、文法処理に特化しているのだそうです。
でも、文法と心って・・・ちょっと遠い気がしてしまいますよね。
ここで、脳機能としての言語について分類しておくと、酒井邦嘉氏は、
言語は知覚・記憶・意識というモジュール(機能単位)からは独立したモジュールである
という立場をとっています。
そして、言語機能には
- 音韻論
- 意味論
- 統語論
という3つの内部モジュールがあるというのですが、この意味論が一番「心」に近いような気がしてしまうのは、コテコテの文系人間だからでしょうか。
ちなみに、脳の言語モジュールとしては、
- ブローカ野
- ウェルニッケ野
- 角回(かくかい)・縁上回(えんじょうかい)
という3つの言語野が候補に挙がります。
ただ、この3つが、音韻論・意味論・統語論とどのように対応しているかは、まだわかっていないそうです。
なんだか「心」というと、左胸にあるハートマークを思い浮かべてしまうのですが、そこがそもそもズレているようですね
言語の研究は、人間の心の探求に他ならない。
さまざまな言語にふれるときに、その違いや共通性について考えてみるならば、きっと心の世界を広くかつ深く理解できるようになるだろう。
ここはストンときました
つづく
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