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2-5 最もわかりやすい日本語

5 最もわかりやすい日本語

 佐藤理史らは、「平易度3」の具体例として、佐藤和之の「Easy Japanese(やさしい日本語)」を挙げている。
 これは、<災害発生時の情報伝達に使うことばを、外国人にもわかりやすく、また情報を提供する日本人にも使いやすいように、簡潔な日本語にしよう>と考案されたもので、阪神・淡路大震災のとき、在日外国人に重要な情報がなかなか伝わらなかったという反省に基づくものである。(佐藤理史・土屋雅稔・村山賢洋・麻岡正洋・玉晴晴『日本語文の規格化』情報処理学会研究報告 2003年1月  Vol.2003 No.4)(佐藤和之『やさしい日本語(Easy Japanese)』外国人のための災害時のことば,月刊言語,vo1. 25, N0.2,pp.94-1o1 1996.)

 「やさしい日本語」は、日本語能力試験3級程度の外国人を対象者としているが、具体的には<友人と待ち合わせ(時間や場所を決める)ができたり、自分のほしいものを説明して買い物ができたりする程度の日本語能力>を指す。<文字表現でいうと、小学校の2、3年生で習うくらいの漢字と平仮名およびカタカナによる表現>である。(弘前大学人文学部社会言語学研究室のホームページ)

 佐藤和之ら「災害時の日本語研究グループ」は、日本語初級後半~中級前半程度(日本語学習歴5か月~2年程度、あるいは日本滞在歴5か月~2年程度)の外国人に対して、聴解実験を行っている。
 災害時に、実際に報道されたNHKのニュース原稿のニュース文(A)と、やさしい日本語で作ったほぼ同内容の外国人用のニュース案文(B)を被験者に聞かせ、理解度を調査したところ、(A)を聞いたグループの正答率は29.3%、(B)を聞いたグループでは90.7%という結果が出た。(弘前大学人文学部社会言語学研究室のホームページ)

 佐藤和之が指導教官である弘前大学人文学部社会言語学研究室のホームページには、『新版 災害が起こった時に外国人を助けるためのマニュアル』(2004年発行)が公開されている。
 マニュアルの構成は次のとおりである。

  • ラジオ放送や防災無線、テレビでの字幕スーパーに使える「やさしい日本語」の案文(時系列に配置)
  • 発災直後から使える「やさしい日本語」を用いたポスターやビラの具体例
  • 外国語で治療を受けられる病院のリストやボランティア団体への連絡方法、大使館への連絡方法など
  • 「やさしい日本語」が考え出された経緯や基礎資料となった文献のリスト

 マニュアルでは、「やさしい日本語の作り方」として、

  1. 1文を短くして、文の構造を簡単にする
    例:
     「地震の揺れで壁に亀裂が入ったりしている建物に近づかないでください」
    →「地震で壊れた建物に気をつけてください」
  2. 難しい言葉でも、災害時にはよく使われ、知っておいたほうが良いものはそのまま使い、そのことばの後に<  >を使って言い換え、一緒に使う
    例:
     消防車 → 消防車 <火を消す車>
  3. 外来語は通じない
    例:
     ダイヤル→原語とは発音が異なる
     ライフライン→原語とは意味が異なる
     デマ→原語では行われない省略であるため意味が通じない
  4. 動詞を名詞化せず動詞文にする
    例:
     「揺れる」   揺れがあった → 揺れた
  5. 二重否定を使わない
    例:
     「通れないことはない」 → 「通ることができます」「通れます」
  6. 「おそらく…」「たぶん…」などの、あいまいな表現は避ける

などを挙げている。(弘前大学人文学部社会言語学研究室のホームページ)

 特に6.は、日本と外国の文化・社会的背景の違いが影響するものと思われるため、前述の藤田が指摘する言い換え分類の中の<語用論的効果の同一性による言い換え>が必要であろう。

Zu1  また、言い換えシステム「KURA」の開発チームのメンバーでもある乾健太郎は、聾学校の語学担当教諭に対するアンケート調査を行っている。
 アンケートの内容は図1のようなもので、この調査結果から、可読性基準をモデル化し、言い換えによる読解支援システム構築を目指している。(J-STORE(日本語を簡単な日本語に言い換える -福祉的コミュニケーション支援に向けて-

 このシステムを含む研究成果は、しかるべき場所へ公表し、特殊教育分野や医療リハビリ分野に対して広報活動を行うという。福祉的コミュニケーションが欠かせない行政に対しても、ぜひとも広報活動を行ってほしいものである。

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