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2-3 わかりやすい文への言い換え

3 わかりやすい文への言い換え

 高橋らの定量的評価のように、客観的にわかりやすさを評価する取り組みは複数見られるが、評価した結果、「わかりにくい」と判断された場合は、わかりにくい部分をわかりやすく書き換えることになろう。

 佐藤理史は、言い換えの分類に役立つものとして、次のような翻訳の分類を挙げている。(佐藤理史『論文表題を言い換える』情報処理学会研究報告 1998年9月  Vol.1998 No.82)

  1. 構文的言い換え
     言語学に立脚するもので、与えられた文の単語と構造を他言語の対応する単語と構造に移し変える
     例)システムの生成→システムを生成すること(単語を同義語や類義語に置き換える言い換え)
  2. 意味的言い換え
     コミュニケーション理論の立場に立つもので、発話文の意味が同一になるように他言語の文を作り出す
     例)去年の出来事→1997年の出来事
  3. プラグマティックな言い換え
     社会言語学的立場に立つもので、ある発話文がその社会で理解され、種々の効果をあたえるのとまったく同じ効果を他の言語の社会においても生じさせるような翻訳文を作る(ことわざや四字熟語をその由来となった表現、あるいは描写する表現に言い換える)
     例)言い換えは目的を必要とする→目的のないところには、言い換えは存在しない

 その上で、<難しすぎる3.をとりあえず除外し、1.2.にそれぞれ対応する、構文的言い換えと意味的言い換えを考える>ことにしている。

 これを受けて藤田篤は、その修士論文で、1.を「語彙的言い換え」(内容語の置換に重点を置いた言い換え)と「構文的言い換え」(構文構造の変換に重点を置いた言い換え)とに分類し、<格交代や否定表現の言い換えなどは、主辞や視点の交替を含むため一見すると構文的言い換えのようであるが、これらは動詞の自他交替や名詞の反義語などの語彙知識を必要とする言い換えである>としている。(藤田篤『語彙的言い換えに必要な言語知識の組織化と実装』修士論文, 九州工業大学大学院情報工学研究科, 2002.)

 藤田と乾健太郎はさらに『言い換え技術に関する研究動向』で、

  1. 語彙・構文的言い換え
     内包的意味の同一性に基づいた言い換え
  2. 参照的言い換え
     内包的意味が違っていても参照の同一性に基づいた言い換え
  3. 語用論的言い換え
     語用論的効果の同一性に基づいた言い換え

であるとし、「語彙・構文的言い換え」の分類と例文の一覧を掲載している。(乾健太郎,・藤田篤『言い換え技術に関する研究動向』自然言語処理, Vol. 11, No. 5, pp. 151-198, 2004.10.)

 これについても、前述の区の文書事務の手引きと広報研修テキストに掲載されている内容を分類し比較したが、修正案の具体例に乏しいため、記載できるものがほとんどなかった(表5『言い換え技術に関する研究動向』との比較は省略する)。

 なお、藤田が在籍していた奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科の「言い換え勉強会」では、このような研究成果に基づき「KURA」という言い換えシステムを開発した。
 「KURA」は、形態素解析システムと日本語係り受け解析器などを利用して、文をツリー構造に変換し、言い換えのための規則(構造変換規則)と不適切な表現を修正または棄却する規則(修正規則)を適用して言い換えを行うシステムである。(「言い換え勉強会」のホームページ「言い換えエンジン KURA」の変換・修正規則

※注 「KURA」で利用されているシステム京都大学言語メディア研究室で開発された形態素解析システム「JUMAN」と構文解析システム「KNP」は、インターネット上で誰でも利用できる。(形態素解析システム『JUMAN』構文解析システム『KNP』(京都大学言語メディア研究室)

 言い換えることがすべてわかりやすさにつながるとは限らないが、わかりにくいという評価を下された場合に、わかりやすく修正する方法を例示されることは必要であろう。
 とはいえ、行政職員が日々の文書業務の中で、一つひとつの文を評価し、言い換え案を探し、修正することは現実的ではない。例えば、ホームページ作成システムにこのようなシステムが組み込まれるなど、製品化されることを期待する。

 なお、KURAはじめ自然言語処理に関するシステムで、無償で公開しているものはいくつかあるが、パーソナルコンピューターの一般的なオペレーティングシステムであるMicrosoft Windowsでは動かすことができず、コンピューター言語に関する専門的な知識のない者には使用できないものである。

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