2-2 わかりやすさの基準と指標 ―表現の品質
2 わかりやすさの基準と指標 ―表現の品質
表3は、高橋らが経験的な知見を基に、わかりやすさに関係すると考えられる文書構成上の要素を抽出したものである。
高橋らは、サンプル文書を形態素解析した結果に対する統計解析と、サンプル文書についての読者へのアンケート調査とを利用して、計算機マニュアルのわかりやすさを定量的に評価するモデル評価式を作成した。その際に、この表の要素の中から比較評価の対象としてふさわしくないものを外し、残りを基礎指標として利用している。
| 基準 | 基礎指標 | |
|---|---|---|
| 理解しやすさ | 受動態頻度 | 理解しにくさに比例する |
| 抽象語句密度 | 理解しにくさに比例する | |
| 逆茂木文頻度 | 理解しにくさに比例する | |
| 二重否定頻度 | 理解しにくさに比例する | |
| 平均述語数 | 理解しにくさに比例する | |
| 指示語率 | 理解しにくさに比例する | |
| 箇条書き頻度 | ||
| 平均見出し率 | ||
| 折り込み語句頻度 | ||
| 例・注・備考頻度 | ||
| 重文・複文頻度 | ||
| 平均文節数 | ||
| 読みやすさ | 折り込み語句頻度 | 読みにくさに比例する |
| 例・注・備考頻度 | 読みにくさに比例する | |
| 非ひらがな率 | 読みにくさに比例する | |
| 英数字・カタカナ率 | 読みにくさに比例する | |
| 漢字密度 | 読みにくさに比例する | |
| 平均文長 | 読みにくさに比例する | |
| 平均述語数 | ||
| 指示語率 | ||
| 文字充填率 | ||
| 使いやすさ | 箇条書き頻度 | |
| 平均見出し率 | ||
| 索引項目密度 | ||
※抽象語句
- 形容動詞化語尾(~的、~性、~度など)を付加したもの
- 比較対象の省略された形容詞
- 富士通のATLASの辞書において、"抽象的でかつ、人が作り出した知的概念"のタグが付与されているもの
※折り込み語句
文中に()または引用符号などで埋め込まれた語句※逆茂木文
長い前置修飾節。このシステムでは、連体修飾句が3つ以上、またはひとつの体言を修飾する句が入れ子構造になっているもので代用している。(高橋善文・牛島和夫『計算機マニュアルの分かりやすさの定量的評価方法』情報処理学会論文誌, Vol.32 No.4 1991.4)
表中の太字部分は、わかりやすさと読みやすさの基礎指標として重複していて、かつ相反する要素である。例えば「折り込み語句」は、専門用語やアルファベットの略号などをカッコ書きで解説をつける場合などに使うが、これがあると理解を助ける一方で、文脈が中断され、一文が長くなり読みにくくなる。
この場合、必要な注釈を折り込みつつも、あまりその頻度が高くならないよう注意が必要であり、そのバランスについては、統計解析により数値化し客観的指標を与えている。
この分類に従って、前述の区の文書事務の手引きや広報研修テキストに掲載されている内容を分類し、比較したものが表4「表現の品質の分類と比較」である。(※表4はこのサイトでは省略した。)
これを見ると、語彙的な側面に関しては具体的な言い換え例を複数挙げているが、構文的な側面に言及しているものが少ない。杉並区の『外来語・役所ことば言い換え帳』や、昭島市の『役所言葉をなくそう!~わかりやすく親しみやすい文書づくりをめざして~』も同様であり、行政における文書のわかりやすさの解釈として、語彙的な側面に重点を置いている様子がうかがえる。
なお、ここでは文書の表現品質についてのみ比較した。内容の品質については後段で述べることとする。
※注 高橋らの研究成果
解析手法は統計学の専門的知識を要する難解なものであるため、自分で計算式に数値を当てはめて評価することは困難である。このような指標に沿って自動的に評価できるシステムの存在は有益であり、<研究成果は富士通のマニュアル推敲・査読システム「MAPLE」に組み込む>と締めくくられているが、製品化や公開されたという情報は得られていないのが残念である。
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