2-1 わかりやすさの分類
第2章 言語学的な「わかりやすさ」とは
1 わかりやすさの分類
難波英嗣・奥村学は、一般にテキストの読みやすさには次の2種類があるとしている。(難波英嗣・奥村学『書き換えによる抄録の読みやすさの向上』情報処理学会研究報告 1999年9月 Vol.1999 No.73)
- わかりやすさ
- 表記の正しさ、語彙の難易、文構造の複雑さなどによる文章の理解(言語学・自然言語処理に関するもの)
- 見やすさ
- 活字のフォント・スタイル、行間のバランス、レイアウトなどによる見易さ(主に印刷・出版業界で調査・研究されているもの)
このうち、本稿では「見やすさ」は論じる対象外とする。
また、高橋善文・牛島和夫は、<事実を正確にかつ素早く伝える必要のある技術書(マニュアルに代表される)の品質を確保することは情報化時代に必須の作業>であるとし、<従来、主観的と考えられていた"表現上の分かりやすさ"を定量化し、客観的な評価を下すこと>を可能にするため、わかりやすさの品質評価方法について考察している。(高橋善文・牛島和夫『計算機マニュアルの分かりやすさの定量的評価方法』情報処理学会論文誌, Vol.32 No.4 1991.4)
行政も「経営」し、その「品質」を問われる時代である。私が勤務していた区では、「広報品質評価委員会」という会議体を持ち、広報の専門家と区民の代表とからなる評価委員に、区の広報の品質を評価し、提言・助言をいただくしくみを持っている。高橋らの考察の動機と目的は、行政の広報文もマニュアルと同様であり、その分類は参考になる。
高橋らは、計算機マニュアルの品質について以下のように分類している。
1.内容の品質・・・設計時に決定(設計品質)
(1)読者に伝達する情報の必要十分性
(2)マニュアルの位置づけ
(3)マニュアルの構成
2.表現の品質・・・執筆時に決定(執筆品質)
(1)表現品質
- 理解しやすいか(文の平易さ、簡潔さ)
- 読みやすいか(通読し易さ)
- 使いやすいか(検索性の良さ)
- 図表は適切か
- 例は具体的か
(2)正確さに関するもの
- 情報は正しいか
- 表記は正しいか(文法誤り、誤字、脱字、不適切用語)[8]
この「2.表現の品質」のうち、理解しやすいか、読みやすいか、使いやすいか、について、高橋らの論文には具体的な項目が網羅されていた。
こんなお話も含めて、セミナーを開催します。
全国の行政職員の方、もし興味をもたれたら、セミナーにご参加いただき、一緒に考えませんか。
■日本経営協会 公開セミナー
「地方自治体のためのホームページ活用講座 」
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