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4-3 日常生活に必要な情報( レベル2 )

 税金、健康保険、年金などに関する情報は、知らないと損をすることがある。時には法によって罰せられたりもする。「そんな法律があることを知らなかった。誰も教えてくれなかった」と言った人がいたが、知らなければ法を犯していいことにはならない。

 行政の仕事は、基本的に法に基づいて執行されており、専門用語でも住民に理解してもらわなければならないものがある。それをわかりやすく伝えるために必要なことは何か。

 そこで、国民健康保険制度を例にアンケート調査を実施した。
 例文は、難易度、図表や見出しの使い方も同程度のものを2 種類用意し、回答者の性別・年齢が同数程度になるよう、配布した。

 二つの例文の大きな違いは、日本特有の「国民皆保険制度」の説明部分である。
 日本国民と在留資格が1 年以上ある外国人は、本人の意志にかかわらず、なんらかの医療保険制度に加入し“ なくてはならない”ことが法律で定められており、言い換えれば、医者にかかろうがかかるまいが、保険料を納めなくてはならないしくみになっている。
 保険料を滞納すれば、税金同様、差し押さえなどの行政処分を受けることもある。

 このことは、行政の職員であっても、自らが国民健康保険に加入したことがなく、知らないことが多い。会社勤めが長く、職域保険にしか加入したことがない一般市民も同様である。

 しかし、聞こえのいい「医療費の自己負担額が軽減されるというメリット」ばかり強調したり、「強制保険」を「助け合いの精神」と表現したりすることが多いため、正確な理解を妨げている。
 一方で、「きちんと手続きして欲しい」がために、手続きについては詳細かつ具体的に説明するなど、例文A はその一例である。

 このアンケートでは、社会文化的背景の相違がもたらす理解度の違いを考慮した内容と、そうでない内容とのわかりやすさの違いを検証することを目的とした。
 また、「わかりやすさ」という抽象的な概念で各人が主観的な評価を下した結果ではなく、わかったかどうか、理解したかどうかをもって、わかりやすさを評価した。

 別紙「アンケート調査報告」の集計結果を見ると、例文A を読んだグループは、「どうやって手続きをするか」に終始し、例文Bを読んだグループは、その9 割以上が「手続きをしなくてはならない」ことに言及している。
 「手続きをしなくてはならない」ことを知らないと損をする。それを理解できるような文章こそが、わかりやすい文章ではないだろうか。

注:アンケート用紙は割愛した。

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